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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


なんとなく、喜之介とかぶる
そう思いながら頭に浮かんだのは今日のこと
春日山城を出る直後の喜之介の言葉
「お前はっ…そこそこ美人、なんだから、攫われないように気をつけてこいっよっ…!!じゃあな!!」
あれは、お世辞なのだろうけど
「ぶす」からは、少しは見られる見た目になったのかもしれないと湖を喜ばせたのも事実だ
思い出し笑いを始めた湖に、三成が声をかけた

「湖様?いかがされましたか?」
「ん?あのね、喜之介が「お前は、そこそこ美人になった」って今日言ってたの。ごめんね、急に思い出しておかしくなっちゃって」

ふふっと、笑い続ける湖から出たのは唐突のない話題だが

「それで、なんで笑ってるんだ?」

安土城の武将達は、喜之介に会った会わないを別にし全員がその存在を知っている
報告書として送られる春日山城の湖について、全員が情報共有しているのだから
だが、十二になってからは別だ
光秀の放っている間者によって多少の情報が入るが、わざわざ越後の彼らが安土にそんな文を送るはずもない

「だって、六つの時は「ぶす」だったのに、今日は「美人」だって言うんだよ?おかしいでしょ?今日で十五になるから、喜之介も気を遣ってくれたんだと思うんだけど、「美人」は格が上がりすぎでしょ?「そこそこ美人なんだから、攫われないように皆から離れるな」って…思い出したら急におかしくなっちゃって」

嫌みを言われたからという感じでもない
湖は純粋におかしいんだろう
ふふっと笑い続けるのだ

「ごめんね。さっき、秀吉さんが「一人になるな」って心配してくれたから思い出しちゃったのかも」

ふっと顔を上げれば、残念そうな表情で自分を見ている四人の顔があるのだ

(あれ?)

「…湖、お前…」
「まだ無自覚か…」
「湖様…」
「あんた…」

(あれれ?)

「こら、湖。お前、義元に言われたことをもう忘れたのか?」

上から聞こえた声に顔を上げれば、そこには信玄達が居るのだ
馬上の信玄は、軽くため息をついている

「義元さま…っ覚えてるよ…もうっ、湖…あの方苦手…」

はっとしたように頬を染めた湖に、秀吉が反応した
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