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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


兼続から渡されたのは、金色の四角い飴だ
それが、手の平に収まる小箱に五つほど入っていた

「…綺麗…かかさまの目みたいな色…兼続、ありがとうっ」
「気に入って頂けて幸いです。某も一つ頂きましたが、非常に甘いので一日一つにしてくださいませ」

大人の親指の半分ほどの大きさの飴は、たしかに金平糖よりずいぶん大きい

「うん。大事に食べるね」

幸せそうに笑えば、風花が興味深そうにふんふんと鼻を鳴らしてその小箱に顔を近づける
「あ、風花はだめよ」と、急ぎ小箱をしまえば、馬は興味を無くし小さく鳴いて催促する
早く乗ってと、言うように首を振るのだ

「海に出向いて以降…この馬は少々荒くなった気が致しますが…大丈夫でございますか?」
「荒くなった?そんな事無いよね、風花」

鼻先を撫でれば、気持ちよさそうに目を細め湖に懐いているのがよく解る

「くれぐれも、気をつけて。謙信様達から離れずに居てください」
「うん。解ってるよ」

こうして、兼続は心配しつつも留守を預かり謙信達の帰りを待つことになった

春日山城を出る際、湖は何人もの女中や家臣に足止めを食らう
皆、祝いの言葉を掛けてくれるのだ
初めの数人は良かったが、あまりの遅さに迎えにきた謙信によってその後は「帰ってからにしろ」と一喝を受け遠巻きに礼をされることになった

ようやく城を出て、飯山城へ付いた際にはもう昼餉間近
飯山城の城門には、仁王立ちで待ち迎える人影が見えるのだ

「あ…政宗と秀吉さん、三成君もいるっあれ?家康様もいる?」
「いるな…全く、気の短い連中だ」
「先行っても良い?ととさま」
「…好きにしろ」

信玄が答えなかった代わりに、謙信が答えると
ちらりと、佐助の馬にいる白粉を見てから湖は駆けだす

「政宗、秀吉さん、三成君、家康さまっ」

風花に跨がる湖が、単馬でこちらに駆け出すのを見てすぐに反応したのは秀吉だ

「っ、こら!湖、危ないぞっ」

大きな秀吉の声は、離れている湖にもちゃんと聞こえている
それに笑ったのは湖だ
おかしそうに笑いながら、馬の速度を緩めず向かってくる
思わず掛けだした秀吉と間近になるのは直ぐだ

「湖…っ一人で動くなっ」

馬の手綱を握った秀吉の困ったような顔を見て、湖は笑った
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