第7章 視察 (裏:謙信、政宗、家康)
■政宗編
無事に安土城へ戻り、信長は秀吉と話をするため、湖を政宗に預け天主へと移動した
政宗は、湖を受け取ると小脇に抱えるように歩き出す
「ま、待ってっ、政宗っ…!私、歩けるって!」
湖が、声をかけても政宗は答えることも止ることも無く湖の部屋の方へ進むだけ
(…っ、怒ってる?)
表情は見えないが、なんとなく気配が怖い
すれ違った女中や家臣達が、顔色を変え去って行く
(やっぱり…怒ってる…なんで?)
そんな事を考えていると、湖の部屋にたどり着いた政宗は乱暴に襖を開け、ピシャリと勢いよく閉じた
そして、湖を下に下ろし自分もその場にどかりと座る
「っ…政宗?」
胡座をかき、目を閉じて座る姿は不機嫌そのもの
「…なんで、怒ってるの…?」
湖は、政宗の様子が変なのは気づいていた
帰りの道中、信長に制され小言を言わなくなってからほぼ無言
信長や家康とは話しても、自分には話しかけてこなかったので、何か気に障ることを言ったのかと思った
「私、何か…嫌なこと言った?」
いまだ政宗の羽織に巻かれたままの湖
その羽織をしっかり合わせてそこから立ち上がり政宗に近づいた
「…政宗」
政宗の方頬に手を近づけると、それを制するように政宗の手が湖の手首を掴んだ
「っ…痛いっ」
掴んだ手首を握られ、湖は顔をしかめた
「…思い切り握ってるからな」
彼が薄ら目を開けると、政宗と湖は見つめ合う形になる
「お前…どうしてあんな事をした?」
(あんな事…謙信さまの事かな?)
「た…助けて貰ったんだもの…お礼を言いたいと思って…」
「あ?…そっちかよ…まぁ、そっちもだな…」
政宗は眉を上げると、もう一度ぎゅうと目を閉じた
そして再び開けると、手首を離し湖を胡座の上で横抱きにするように囲った
「きゃっ…、ま、政宗??」