第28章 桜の咲く頃 四幕(十二歳)
「俺もそのつもりだ…だが、事は慎重に…湖、次の十五の一ヶ月でよく考えて答えを出せ。後悔しないことはちゃんと話を聞いた。だが、これからの一生の事だ。俺が親で良いのか考えて欲しい。そして、その場合…俺は、お前の急成長を十五までにするように土地神に頼むつもりだ」
十五からは普通に、人の流れる時間での成長を望むと…
(私は、もとは二十四だって聞いてる…十五って…十も違うけど、大丈夫なのかな?)
何も言わない周りの様子を見ながら、湖が声を出した
「ととさま…私、それじゃ子ども過ぎない?皆に迷惑かけない?」
「身体は十分だろう。記憶も戻れば、精神的にも問題ないはずだ。湖は、俺の娘になりたいんだろう?嫁ではなくて」
ぶはっと、兼続が飲んでいたお茶を吐き出した
「兼続さん、落ち着いて」
「よ、…っけほっ、げほっ…嫁…!?」
トントンと、佐助が兼続の背中を叩く
「うん。ととさまになって欲しいの」
「なら、やっぱり十五で止めだ」
「なんで?」
「かわいい娘が出来るのに、元の年齢まで戻せば即時に輿入れだろう?俺は娘をかわいがる時間が欲しい」
「……ん??」
首を傾げたのは、湖、幸村その二人だ
「そうだろう?十五であれば、十八くらいまでの伸ばすことは可能だ。三年は手元で可愛がれる」
「な?!何をっ!!湖様には、即時上杉家へ輿入れをっ」
「どうどう。兼続さん…湖さんも居ますよ。目の前に」
「こしいれ?」
くくっとおかしそうに笑う声は、白粉だった
「かかさま?」
「っ、湖、お前のととさまはお前が考えるより危険な男かもしれんぞ」
「信玄さまが…?危険?」
「あれは、堀から埋めて追い込む策士だ。当然危険な男だ」
白粉の言葉を、謙信が肯定するように言いながら酒を飲む
(実際、湖を娘に迎えるなら…やはり国を取り戻す必要がある。この子が安心出来る故郷をこの時代に俺が作ってやらねばならない…それが、俺が出来る恩返しになる)
病を治している
それを見知った瞬間から、信玄は湖にどう恩を返せば良いのか考えていた
詳しくはまだ聞いていない
発作を治めているだけなのか、一時的に治るのか、それとも完治するのか…
湖は言わなかった
信玄が質問をしなかったせいだろう