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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


義元が去った部屋では、まだ全員が立ったままで

「信玄…」
「切掛には良いと思ったんだが…人材が悪かったな」

未だ謙信の着物から顔を離さず真っ赤な湖に、信玄は「悪かったな、湖」と後頭部を撫でるだけに留める

「いやー……いつもながら、浮き世離れした存在感。素晴らしいですね、義元様は」
「褒めるとこじゃねーよ!お前も、こいつの兄役なら止めろ!」
「あぁ、つい…見とれてしまって」

無表情で本音かどうかも解らない返答に、幸村はいらっとした表情を見せる
そんな二人の側から離れた白粉は、謙信にしがみつく湖の元へとやってくると

「湖、大丈夫か?」

と、やや心配そうな声を掛ける

「…かか、さま……あの…聞い、ても、いい?」
「なんだ?」
「その……私は…かかさまや、桜さま…みたいなの?」
「?悪い…意味がわからない」

白粉が返答に困ると、信玄が代わりに答えた

「そうだぞ。湖。何度も言ってただろう?お前は、見た目だけでも危険だと」
「~~っ、ととさま、それは、鈴の事を言ってるんじゃないの・・?だって、喜之・・」
「違う。お前自身の見た目だ。お前は誰が見ても可愛らし・・いや、もうその姿であれば「美しい」と言った方がしっくりくるだろうな。「美しい姫」だよ」

真っ赤な首が、更に赤く染まるようになれば、湖の顔もより謙信に押しつけられる

「う、そ…」
「…まだ言うか。湖、いい加減に自覚出来ないようであれば…そうだな、花を咲かせる手段に出ても良いだろう」

がばっ!と、謙信から顔を離し頭上にある顔を見上げれば、冗談を言っている顔ではないのが解る

「おい、謙信…子ども相手にその言い方はよせ」


「花を咲かせる」その言葉には、聞き覚えがある
白粉の着物を着付、湖の世話をしてくれている女中達が話をしていた
「湖様の花を咲かせるのは、どんな殿方でしょうか…」
「花を咲かせる…ですか?愛でるの方が的を得ているのでしょうか」
「いずれにせよ、湖様をもっと美しくされる殿方は、どうかこの地にいられるとよろしいのですが…私共にとって湖様は、小さな頃から成長を見せていただいた大事な姫様ですから」
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