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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


謙信の代わりに佐助が答えれば、「あーーーあいつはぁー」と信玄の矛先は湖に向く

「ですが、そろそろ外聞も考えてあげないと」
「あいつの母親は何をしてるんだよ」
「幸、白粉さんはそもそも猫だ…人の常識を押しつけるのは無理だと思う…」
「……あーすっかり忘れてたな…あいつは元が猫なんだよな…湖と同じように元が人だと思い違いしてた…」

幸村の言うことはには一理ある
もう人の姿がすっかり馴染んでしまっている白粉
着る着物も人のものだ
妖術で出すいつもの着物と異なり、日によって違う色の着物も纏う
ましてや、湖の母親の立場だ
湖と同様、人と猫が一つの器に入っている状態の存在なのだと思い込んでしまう
妖などという奇っ怪な存在だと言うことを忘れてしまうのだ

そうそう湖が十二になって春日山城へ戻った際、眠ったままのその姿に城内の者は響めいた
もちろんそれは何が起こったのだと、眠ったままの様子に対してもあったが
大半は抱えられた少女の容姿についてだった
「…湖様だ…」「お美しくなられ…」など、元の湖の姿をすっかり思い出させる容姿に…
同時に佐助の抱えている猫にも視線が行く
最近よく城内で見かける白猫だ
その白猫が湖と一緒に眠ったままで帰ってきたのだ
鈍い者でももう解る
「あれは、白粉様だな」「なんと…」「あー…儂らのしろちゃんが…」
と、一部の猫好きはうすうす気付いてはいたものの、気付かないふりをして白粉を追いかけていた
だが、全員がはっきり気付いてしまえば
もうしろちゃんには手を出せないだろう

(あの時、じゃあすすちゃんは?とならなかったのが不思議だ…いや、あえてだったのか?)

この謙信様大好きな春日山城の皆は、謙信が第一だ
見なかったことにしろと言われれば、徹底して見なかったことにするだろう
だから湖がこんな成長の仕方をしても、未だ城下にへんな噂は立たないのだ
立った噂はこんなものだけだ

美しい刀の化身がいる
綺麗な姫様が城にいるらしいぞ、お披露目はいつだろうな
可愛らしい姫だときいたぞ
なんでも、その美しさから安土の武将達にも目をつけられているらしいぞ

一番初めの噂は信玄様が流したもの
それ以外は、ただ姫がいるのだという事実だけが一人歩きしているものだ
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