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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


翌日、政宗と三成は後ろ髪を引かれる思いもあろうが春日山城を後にした
更に次の日、白粉は目を覚まし兼続から登竜桜の言伝を伝えられる
深いため息を落とした後「解った」と一言そう言うと、その姿を猫に変えて湖の横に丸まった
そのまま、更に四日たった早朝のことだった


「いっ…、いったぁーーーいっ!!!」

湖の部屋から聞こえてくるのは、おおよそ目覚めの声とは異なる叫び声
まずは仕事を始めていた女中が気付き、部屋に入るとそこには羽織の中で丸まったままで白粉(人)に背中をさすられている湖の姿だ
姿と言っても顔は見えないが、起きているのは解る
なにせ、「痛いっ痛い」とずっと言っているのだから
慌てたように、バタバタと走るもの
「どうされましたか?!」「医師を呼びますか?!」とかけよる女中
おろおろと、白粉を見る女中
様々だ
そんな中、白粉は苦笑いしたように背中をさすっているだけだ

バタバタバタ…っ

久々の忙しない足音に白粉が襖の方に顔を向けた

「兼続か」
「お、白粉殿っ、湖様は…っ」

その後ろからも足音は聞こえる

「案ずるな」
「案ずるなと言われても、そのように訴えられては…っ」

「湖、目が覚めた…か…?」

信玄も顔を覗かせるが、様子に眉間に皺が寄る
だが、「痛い、痛い」とまるまる湖と、その背中をさする白粉の様子に「あぁ…」と何か納得した声を出すのだ

「なっ、なんでございますか?!信玄殿っ」
「あー…うん。そうか…そうゆう頃だな…」

ポリポリと、後頭部を掻いていれば続いて部屋に来たのは謙信、佐助、幸村だ
その頃には湖は、「痛い」とは言わずにただ「うー…っ」と小さく唸るくらいになっていた

「なんだ…どうした?」
「湖さんっ?!」
「な、なんだ…っまさか、その中身…っ」

「うん。幸村。中身は湖で違いない。変な事を口にするもんじゃないな」

ポンポンと、幸村の頭を叩くと信玄は湖に近付いていく

「湖、痛いのは腹だけか?」
「ととさまぁ…」

羽織が少しだけ持ち上がると、そこには涙目の湖の顔が見える

「驚いたのもあったようだな」

背中をさすったままの白粉がそう口にした
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