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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


(童のままだな…)
『なにも。お前の音を聞こえるようにしただけだ』
「でも、すごーいっ!にーさま、音が付いたよっ!歌ったら、伴奏があるんだよっ」

歌が大好きな彼女にとって、自分の歌声に合わせてなる音達
それは、言葉では言い表せない至福なのだ

「わたしの音……じゃあ…こんなのも…」

急に小声になった湖は、目を瞑る

「湖様?」
「湖?」

三成と政宗がその様子に首を傾げれば、聞こえてきたのは…

びくりと、身を揺らしたのは佐助と湖以外だ

ドドッドッ…

まるで、地をかける軍隊の地響きのような低い音

「な、っ、なにごとでございまするかっ?!」

それに周囲を警戒してしまう兼続だが、当然のように登竜桜のこの世界は穏やかなままだ
登竜桜と、白粉はやれやれといったような呆れた表情
音を聞こえるようにした登竜桜は、当然のようにこの音が湖の仕業であると知っている
そして、白粉は彼女の中にいた時に聞いた事があるのだ

「…ドラム…」

佐助がぼそっと言った言葉に、謙信が尋ねた

「なんだ、それは…兵器の一種か?」
「いえ、兵器ではないです…南蛮の太鼓のようなもので、太鼓以外にも金属音などを鳴らせる楽器です」

そう湖が目を閉じて歌おうとしているのは、ロック
しかも日本の曲ではない
おそらく父が好んだ物だろう
一世代前、だが幅広い世代が知る国外の曲だ

すぅ・・・そんな音を立てて、息を目一杯吸い込むと
湖の口から飛び出す言葉は、やはり異国の言葉(英語)だ

― It’s no big deal. What are you so nervous about? Just chill out…

『…これは言葉なのか?』
「この国以外の言葉ですよ…おかか様なら、湖の心内が解る。どんな歌なのかわかりませんか?」
『ふむ……』

白粉にそう言われ、登竜桜は湖に集中する
そうすれば、日本語の意味も解るが…

『いや、意味はいいだろう…これはこれで、音を楽しむとする』

と、面倒になったのだろう
もしくは、目の前の酒を優先にしたのか
登竜桜は、それを直ぐに止め酒を飲み始めた
その様子に、白粉と兼続が苦笑する
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