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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


ほほっと優しげに笑う政盛
草の上に腰を、二人は酒を飲んだ
そのほとんどは、政盛の一方的な話だだ
その話から彼の性格が伺えた
堅物で真面目で嘘がつけず純朴

『なぜゆえ此処に来た?』

脈絡の無い質問に政盛は笑いながら答えた

「隠居して思い出すのは、戦の日々ではなく、五年前に道を教えてくれた親切なお方のこと。当時の某は戦の連戦でお礼も出来ずに居ましたので、参った次第です」

だが、このような森で一人でいた女性
政盛は、人では無いかも知れないと当初から考えていたようだった
心の内が聞こえてくる
(妖、鬼、幻…おそらく人では無いだろう)
いくつも考えた上で、わざわざ手土産を持ってきた男だった
(だが、美しい人だった)



(もの好きな男だった)



それから一月に一度の感覚で、政盛は登竜桜の元に来た
登竜桜も最初は嫌な顔を見せたが、それが当たり前になってくれば魅せる表情も変わってくる
何より、政盛が持ってくる人間の酒、食べ物に興味があった
食事は必要では無い
だが、味覚はある
特に、政盛の酒はくせになった
会って何を話すのか、変わらず政盛の話が多く
その多くは、家族のことだ
息子の事、孫の事、そしてなぜか女子の事
家に居る女中の所作が素晴らしいだの
茶屋の娘が愛らしいだの
政盛は女子好きだった
だからと言って手を付けたりはしないようだが、可愛い女子を眺めるのが好きなのだ
その話に、毎度あきれ顔をしたのは言うまでもない

二度ほど、彼は孫を連れて来たことがある
5つになる手前の政頼だ
一度目は、気絶し帰りがけに気がつき泣き出した
二度目は、顔を真っ青にしたものの意識は手放さず…常にびくびくと怯えていた
登竜桜は、彼から聞こえる心の内があまりにも騒がしく眉をひそめる
聞こえ漏れる内容にだ
まだ幼子の彼、母親や祖父に助けを求めるように心の中で泣くかと思えば…
聞こえるのは、男の名
どうやら、自分の命が終わる前に思いを伝えたいと言うのものだが…
だが、その名は一人では無いのだ
そのすべてが男の名だと気付くと
登竜桜は、盛大なため息をこぼし童の額を小突いた

『童、その年にて男に興味を持つか…今からでも遅くない。この爺に似たのか…』
「おやおや。桜様、某が好むのは綺麗な女子だけ」
「っ…?!」

童の顔色が更に悪くなった
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