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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


『雪が溶けて顔を出した小さな緑
春を知らせるさえずりに 気づき色づく世界
咲きはじめた桜 そこについた滴
きらりと光る まるで宝石』

佐助と登竜桜が武将達の待つ場所へ腰を下ろせど、湖は付いて歩く小動物達と戯れたまま歌い続けている

パンッ

登竜桜の手を打つ音が響けば…

聞き慣れない音が聞こえ始める
まるでそれがはじめからあったかのように、湖はそのまま歌い続けているが…

「これは…ギター」
「ぎたー?それは、この音の事で御座いますか?」

佐助が湖の方を見たままそう言えば、隣にいた兼続は佐助を見て訪ねる

「そうです、兼続さん。西洋の楽器です」

兼続に答えるも、佐助の視線は登竜桜に向いた

『なに…湖の音を聞こえるようにしたまでだ』

盃を口元に運び、満足そうな笑みを浮かべた彼女
またその横にいる白粉も同様の表情をしていた

「湖が歌えば、湖の中ではよく鳴っていたな。知らぬ調べだが、すぐに心地が良くなる」

『くすぶった気持ちは 色づく
やわらかく、つよく、やさしく
背中を押す
上をむきなさい 魅せてあげなさい』

湖の声と共に、柔らかな楽器の音
ギターや、ピアノ
この時代に聞かない音の数々

「…あいつの歌は、心地よい…が、あいつの中では更にこんな音がしてたんだな…」

政宗は、口角を上げ面白そうに湖を見た

「…湖様の歌が心地よいわけですね」

同じように、三成もまた湖の様子を視界に入れながら、初めて聞く音色に耳を澄ます

(緊張感のない、心地よく…甘い…湖にであうまで無縁なものばかりだな)
「菓子のようだな」
「菓子とは…確かにそう比喩出来ますな…」

謙信のつぶやきに、兼続が同意をした

やがて一曲終われば、湖は兎や狸の頭を撫でてこちらに向かってくる
そして、敷物に上がる手前で一度くるりと回ってみせた

「十二になりました。背は、あんまり…変わってないけど…少しはお姉さんになったかな?」

えへへっと、人なつっこい笑みを浮かべる少女
仕草はまだ童であるが、すっかり湖である
見知っている湖より少しだけ幼顔の彼女は、武将や母の返答を待っている

「湖」
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