• テキストサイズ

【イケメン戦国】私と猫と

第27章  桜の咲く頃 ひとやすみ(初恋の巻)


するっと、襖が開くとその場で頭を下げた兼続

大名にも軽く会釈をし、謙信の方へすっと寄ってくる
そして耳打ちをするのだ

いつもであれば、そのような事はしない
内々の話であれば、客人であろうが「人払いで失礼致しまする」と追い払って話をするのだ

(なんだ…?)

その様子に、謙信は眉間に皺を寄せた


「殿、あと半刻で切り上げです。湖様と城下へ」
「…湖がどうかしたのか?」

兼続の小声に対し、謙信は普通の声で答える

それに大名は酒を飲みながら聞き耳を立てた


「…「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで」このような歌は、きっと後の世にも残るのでしょうね」

(しのぶれど……秘めた思い…)


チャキッと刀にかかる手
思いも寄らぬ行動に兼続がぎょっと驚く

「と、殿っ?!」

それまで小声だった兼続の声が変わった
謙信の様子に大名も驚き、一気に顔色を悪くする

(な、なにやら雲行きが怪しいぞっ…!!これは、探るなどせず…さっさと退却をっ)
「け、謙信様っ!拙者は、本日はこれにて退散致します」

そうして、ささっと部屋を出て行くのだ

するっと抜かれた刀は、綺麗な弧を描く

兼続の人払いはこうして上手く言ったわけだが、肝心の謙信に伝わっていない

「湖が、誰にだ…」

不機嫌…いや、怒りに近いだろう顔で、兼続を睨むのだ

「と、殿っ落ち着いてくだされっ!だ、誰に・・!?」

抵抗をしない兼続の首元にあたる冷たい物

「言え」
「と、殿っ」
「……言え」
「殿で、ございまするよっ」

すっと引かれた刀に、兼続は自分の首元に手を当てる
血はつかない
どうやら押し当てられただけだが、殺気がそうは思わせないのだ

「…お前は何をしに来た」
「あの男を追い払いにでございますよ。まさか、このように追い払われるとは思いませんでしたが…」

チャ…

音を立てて刀が納められれば

「そうか…ご苦労だったな」

何事も無かったように、謙信が部屋を出て行こうとするのだ

「あ、殿っ!少々お待ちをっ湖様には半刻後とお伝えを……」

何も答えないその背中に

(あぁ…これは、聞こえておりませんな)
/ 1197ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp