第7章 視察 (裏:謙信、政宗、家康)
そして、自分が家康に抱えられていることに気づく
(家康?なんか怖い顔してる…)
怒りの視線を向けている先を見れば、謙信の背中が見えた
(謙信さま?)
耳鳴りが収まると同時に、先ほどの爆発を思い出す
(っそうだ!…私、あの爆弾を池に…っ)
地を見れば、地面が濡れ鯉がもがいているのが見えた
「っあんた、よかった…何やってんのっ…」
家康が、腕の中で動く猫に気がつく
(…私あの時、箱と一緒に池に…)
再度、謙信の方を向けば彼の青い羽織に数か所、黒い染みのようなものが出来ていた
そして床には、赤い転々とした跡も
(っ…謙信さま…そうだ、謙信さまが助けてくれたんだ…そのせいで怪我してるんだ…)
みゃーん、そう猫は鳴き家康の手から降りた
そして家康が止めるのを聞かず、謙信のもとへ
謙信の足もとに、猫が来る
だが、彼は大名しか見ていない
気づいた政宗が湖を呼んだが、湖はその場を離れなかった
(っ謙信さま…)
にゃーんっ
謙信は視界に猫の姿を捕らえ、その体を持ち上げると肩に乗せた
湖は、それを大人しくされるがままになっている
「…上杉…それは、俺のものだ。返してもらおうか」
信長は片眉をあげ、その場に立ち上がる
「…知ったことか…この女が来たんだ…」
「湖っ、何考えてる?!そいつは、上杉謙信だぞ」
政宗が言うことは理解している
上杉は、信長と敵対関係だ
だから、信長陣の湖が上杉謙信に近づくこと自体許されない
だが、自分のせいで怪我をさせてしまった謙信を湖はそのままにはできなかった
(せめて…せめてお詫びを言いたい…)
耳を伏せた猫は、謙信の肩から身を乗り出し、その唇を掠め取った
「…っ」
「ぎゃああぁっぁっ!!!」
その様子を見ていた大名の目が見開かれる
当然だ、猫が女子に変わったのを目の前で見ているのだ
大名は、泡を吹き気絶してしまう
「っち、湖っ」
政宗がすぐに自分の羽織を脱ぎ、湖を包むと謙信から剥ぎ取るように距離を取った
「っお前!何考えてるっ?!」
一方、謙信は猫が目の前で湖の姿に変わったこと
そして、自分に口づけしてきたことに呆気を取られたようだった