第26章 桜の咲く頃 三幕(九歳)
『あぁ…揺れないな…』
確かに兼続の馬に乗ってみれば、揺れが少ない
(揺れないわけでは無いが…)
佐助の馬より上下の揺れがかなり少ないのだ
「さようで御座いましょう。少し癖のある馬で、遅く見られがちですが、走らせれば持久力のあるいい馬なので御座います」
『そうか…』
ブルル…
と馬がなく
それは、主人に対する喜びの声だった
『…信頼されているな』
白粉の頬が緩んだ
「なにか申されましたか?」
『いや…なにも…私は、このまま休む。何かあれば、起こしてくれ』
(この男の…兼続の匂いがすると…どうにも落ち着かないが……悪い気はしない)
果たして白粉は飯山城まで眠ることができるのか
一方の湖は、政宗の懐で起きることはなさそうだった
「久しぶりの感覚だな…」
「鈴様…が、ですか?」
「いや。湖にせよ、鈴にせよ。安土に居たときには、結構ここに入れていたからな…だが、まだ子猫だな。重みが違う」
「そう言えば…鈴様の成長度はどうなっているのですか?」
三成の声は佐助に向けられていた
「鈴も成長していますよ。ただ、人と猫との成長速度は異なります。なので、桜様の調整で鈴も人と同様の時の流れで成長するようになっています」
「今、湖様が九歳と言うことは…」
「はい。鈴は六ヶ月程度。今日、湖さんが十二歳になると、鈴は八ヶ月くらい…まだ子猫ですね」
「では、以前の鈴様の大きさになるのは…湖様が二十五歳以降になりますか?」
「そうですね…大体そのくらいだと思います」
(あの大きさの鈴様になるのは、湖様が成長し終わった先になるのですね…)
湖が元に戻るとすれば、二十四歳の状態だ
十二、十五、十八、二十一、二十四…あと五ヶ月
「五ヶ月…?」
「ええ。半年程度で調整がつくと桜様が仰っていたので、おそらく十八くらいから湖さんと鈴の様子次第で元の年齢に戻すのではないかと思っています」