第26章 桜の咲く頃 三幕(九歳)
「あのようなこと人で見たことはいままでありますか?」
「ないよ」
だんだん話が向かうべき方向へ向かってくれば、兼続はうっすら頬を染める
「人はおおっぴらにあのような行為を致しません。隠れて…というのは語弊があるかもしれませんが、理性のある人間ならばその行為は他人に見られない場所で致します。なぜか解りますか?」
「…見られたくないから?」
「そうですね。見られたくない…羞恥、無防備、快楽へののめり込み…色々な理由は御座いますが…今の湖様に理解いただきたいのは、女性に隙があって男に理性が無ければ、その身は常に危険だと言うことです」
「……むずかしい…」
困りましたね…と三成が眉をひそめていれば、政宗が立ち上がって近付いてくる
「お前の話は小難しい」
そう言い、湖を押し倒すと片手で湖の両手を頭の上に拘束し身動き出来ないようにするのだ
「ま、政宗??」
「だ、伊達 政宗っ!!」
兼続が驚き政宗の肩を掴む
だが、びくりともしない政宗の身体
痛くはないが、身動きがとれない上
自分を挟んで跨がる政宗の近さに驚く湖
「解るか?」
「な、なにが」
「男と女では力の差がある。お前が隙を見せれば、すぐに獲物の対象だって事だ」
兼続に押され身を離せば、政宗は続けて言う
「朝見た狸たちのようにされるぞ」
「貴殿っ!湖様に何をっ!!」
食ってかかりそうな兼続に政宗は退散とばかり縁側に出て、またごろりと寝転んだ
「たぬきたち…」
想像してみれば、自分が鈴から戻れば裸なわけで
裸で抱き合う
お風呂じゃ無いのに
なおかつ、三成は言っていた
子作りの為には身体のどこかをつなげるんだと
(どこかは知らないけど…なんか、それって…)
「恥ずかしいかも…」
小さな声、少しだけ染まった頬
頬に手を添えれば、自分の頬が火照っていることが解る
「多少は理解しただろ?」
「な…っ」
政宗と兼続は湖を見ていた
三成も同じく
「湖様はまだ子どもで認識が薄いかもしれませんが、特に鈴から元に戻った際…肌を男に見せるのは危険なのです。理性を外すきっかけになりかねません。ご理解いただけますか?」
「う、うん…ちょっと、わかったかも」