第26章 桜の咲く頃 三幕(九歳)
「ちょっとで構いません。少しずつ理解してくだされば結構です」
「でも…」
三成と政宗には想像がつく
湖の「でも」のあとの言葉
兼続は「でも…なんで御座いますか?」と湖に尋ねた
「うん。湖ね、喜之介の持ってた絵の人や、かかさまみたいな身体じゃ無いよ」
これには、政宗と同じく縁側に居た白粉も驚く
急に自分の名前が出てきたことに
「こう・・胸もないし、まるっとしてないし…男の子と一緒でしょ?」
そうして自分の胸に手を当てる湖に、兼続の顔は一気に染まり
三成と政宗は予想どおりの言葉にため息を漏らす
「だから、大きくなってそうなったら気をつければ大丈夫だよね?」
「「湖(様)」」
「なあに?三成くん、政宗」
はぁぁーと二人分のため息が重なった
そんな三人の男が黙れば、口を開いたのは白粉だ
「…湖、お前あと十日もすれば十二だ。身体は変化することを忘れるな」
「わかっているよ。そうなったらちゃんと気をつけるもの」
「…私は、人間のその欲求はどうにも理解出来んが…長く生きていて、子どもが大人に攫われるのを見たことがある。人の中には、子どもすらそのような対象にする変態が…」
少しの間を置き、白粉が小さくため息をついた
「あぁ……側に居ただろう。高梨が」
飯山城城主 高梨政頼
佐助の幼い姿を好み、小さな湖の身体を吟味するように見る
臆病で弱腰の男色、老いた武将
「おじいちゃん?」
「そうだ。あいつみたいな奴がいるから、今からしっかり気をつけろ」
高梨の顔を思い浮かべているのだろう
湖は
「おじいちゃん、面白い人だよ?」
「…あのじじいは、隙あらばそのような事ばかり考えている奴だ。対象は…男もしくは子どもだがな。あのじじいに裸を舐められるところを想像してみろ…」
(男色だと信玄は言っていたな…だが、湖をいかがわしい目でいていたのは事実…)
「……っむり!!」
白粉も酷い言いようだ
だが、そんな彼女自身の顔色も悪い
「全身舐められて、あのだらしない笑いをされたら…無理だ…気色悪くて敵わんな…」
「ひぁああっ、やだやだやだっ!かかさま、変な事言わないでっ!!ぞわってした、ぞわってっ」
高梨はかわいそうに
知らぬところで、酷い言われようだ