第26章 桜の咲く頃 三幕(九歳)
(何でも自分のせいにする癖…これは、もともとの性格なんだろうけど…)
更に拍車を掛けた出来事が湖の過去にあるようだった
その話は、直接は聞いていない
だが、登竜桜と始めた合った際
(白粉さんや桜様が言っていた言葉…あれだろうな…)
-お前が助けた犬や私とは違う…いたずらに傷つけられたわけではない-
-誰しも時折降る雨に水を濁し、川が氾濫する…飲込まれるな。其所にとどまるな…そのままそうしていれば、いずれ水が濁り腐る-
そして、湖が言ったんだ
-澄んだ川でも毒水かも知れない…知らずに川の水を飲んだ誰かを苦しめているかも知れない-
そう確かに言っていた
(湖さんは、獣医だったと聞いている。白粉さんの話からすれば、そこで虐待動物を助けた事で何かがあったのだろう…)
予測するのは簡単だ
だが、それは湖がどれだけ傷つきトラウマになっているのかまでは想像出来ない
(湖さんの困った癖はそれで更に根付いたんだろうな…今の湖さんにはその記憶は無いはずだ。だけど…元々持っているものは変わらないのかもしれない)
でなければ、まだ9歳のこどもがこんな風に考え込むだろうか?
そう佐助は思った
「でも、これが無くても…かかさまは、湖の事すぐ見つけてくれるでしょ?」
「確かにな。だが、鼻が効かぬ事もある場合も想定できる。身につけておくのがいい」
「…耳も聞こえなくなったらどうするの?」
「鼻も、耳もか?」
こくんと頷く湖に白粉は言う
「目がある。だが目も駄目でも、心がある。必ず側に行くと約束しよう」
「…湖も。私も、かかさまを探すよ。側に行くね」
ふふっと笑う湖の頭を白粉は優しく撫でた
その後、喜之介は居ないが湖は勉強部屋へと向かった
「続きをしましょうか」と三成に誘われたからだ
そこには、兼続に三成、そして湖と連れ立ってきた白粉に、なぜか政宗がいた
「湖様、落ち着かれましたか?」
「うん。なんか、すっきりした!心配かけちゃった?ごめんね。三成くん」
その顔と後ろで頷く白粉を見て、三成も兼続も安堵した
「あれ?喜之介は?」
コホンと咳払いをする兼続