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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


湖の顔で、湖の声で返事をするのは白粉だ
着物を押さえ、顔を上げる

「驚きました…」
「瓜二つだ…」

三成と幸村が小さく呟く

「瞳の色が…」

佐助の声に、白粉の手が自分の目元に触れる

「此処だけは化けられんな」

ふっと薄く笑う唇
湖の目は緑がかった薄茶だ
角度によっては琥珀色にも見える
そして白粉は、金色に近い琥珀色
似ている色ではあるが、見知った相手であれば見分けがつく

変化をしても瞳の色だけは変えられないらしい
しゅるりと絹音と共に、その姿を元に戻した白粉は着物を直しながら謙信と信玄の方を向く

「囮くらいには使えるだろう?」

淡々とした声

だが、二人は
二人以外も誰も何も答えない
少し間を置いて声を出したのは謙信だ

「覚えておく…だが」

膝の上でくつろぐ鈴の頭を撫でながら「余計な心配は不要だ」と白粉に答えた

「覚えておいてもらえれば、それでいい」

白粉はその場に座ると、一瞬兼続と目が合う
だが、双方
その視線には気付かないふりをするのだ



湖が戻ったのは昼餉あとだ
すでに鈴が食事を済ませた事もあって、湖はぼぅっと庭をみていた
側に居るのは白粉だ

「湖、まだ眠いのか?」
「ううん。ちょっとぼうっとしてた」
「…心配か?」

そう言われて白粉の方を見れば、白粉が苦しそうな顔をしているのが目に入る
湖は努めて笑みを作れば

「かかさまが居てくれるもの。心配じゃないよ」

白粉の手が湖の髪を梳く
それを心地よく感じ、湖は白粉に寄り添うように身を寄せるのだ

「湖さん。前に家康さんに言われたこと覚えてる?」
「兄さま…覚えてるよ。痛いなら痛いって言うようにって言われたことでしょ?」
「それ…怪我だけじゃ無いからね」

首を傾げる湖に佐助がため息をつく

「此処」

そう言い自分の胸を指で差すと、湖を見て言うのだ

「溜め込まないように。俺はね…兄はね、妹にはいい笑顔でいて欲しいので。小さな事でも口に出してもらえると嬉しいんですが…」
「兄さま…」

部屋にいる佐助は、何かを作っていた手を休めて湖を見ているのだ
それにふふっと湖が笑った

「うん」
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