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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


刀を捨てた謙信は、幸村の居る方を向くとそこに居る家臣達に向けていった

「領土を広げる気はない。だが、こんな茶番はうんざりだ…この国にはしばらく越後から見張りをつける。国をどうするかは、お前達で考えろ…どうしようもない政しか出来ぬのならば、その時はその時だ…」

「なっ…なんて事を…貴様…」

髷を握った大名が起き上がろうとするれば、政宗がそこから動かせない

「おっと。お前は動くなよ…それ以上動けば、俺がその首斬り落とす…」

信玄は刀をしまうと、家臣達に声を掛けた

「手伝いが必要なら、俺が手を貸そう。国を一から立て直すのは労力が必要だ」

ざわざわと家臣達が声を出し始めた
謙信達が手を掛けたのは、領主をはじめとして甘い汁をすすった者ばかりだ
だが、彼らが国を動かしていたのは事実
自分達にその能力があるか否か不安な声が上がり始める

謙信がため息を漏らしたその時

手を上げたのは誰よりも若い家臣だった

「恐れ入ります。私は、先代領主の孫にあたる者。責任を持って国の立て直し…やらせていただきます…」

そう言い、謙信たちに頭を下げる若者
幸村も彼らに向けた刀を腰に納めると、信玄の方を向いた

「そうだ…若様がまだいらっしゃった…」「我らには、若様がいらっしゃる」

家臣達から不安ばかりだった声が薄れる
若様と呼ばれた彼は、己の震えを納めるように手を握りしめているが、
その手が微かに震えていることは向かい合う謙信達には見えていた
その様子に信玄がふっと笑いを零す

「いいな…若い奴のやる気はいい…謙信、俺が手を貸そう」
「…勝手にしろ。ならば、監視には三ツ者をつけろ」
「任せろ」

「待てっ、何を勝手に…!!」

「その男、しばらくの間は牢へ!処罰は追って伝える」

若者の声が張る
その目は、濁りなく澄んだものだった
家臣達が、元領主を捕らえ引きずるように部屋を出ると
改めて若者は頭を下げた

「上杉様、この度のこと…感謝のしようも御座いません。私は、まだこれから学ばないとならない身…ですが、何かあれば、この国は越後に・・」
「いい。要らぬ礼だ…俺は侵入してきた者を打っただけだ。あとは好きにしろ」
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