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【イケメン戦国】私と猫と

第26章 桜の咲く頃  三幕(九歳)


(何処に居ても、あなたが笑っているのならいい…)

記憶が残っていない事は、正直辛い
だが、この小さな湖の記憶がそのままであれば
こんなに毎日笑っていられただろうか?

こどもらしい感情で泣いて笑って話して行動していられたか
鈴との調和を図る為に、器の時を巻き戻したと登竜桜は言っていた
必要な処置ならば、毎日笑っていられた方がいいに決まってる

(近くで見守る事が出来ないのは悔しいですが…)

湖を見ていれば解る
春日山城で大切に育てられている

「心配はぬぐいきれませんが…」
「え?何?なにか、言った?三成くん」

川の水で遊ぶ湖に小さな声が届いた

「いえ。湖様、落ちないように気をつけてくださいね」
「だいじょーぶ」

そう答える湖を引く腕

「大丈夫じゃねー…もう袖濡れまくってるだろうが」

ぐいっと体を引くのは幸村だ

「あ。ほんとだ」
「ったく…」

文句を言いながらも懐から手ふきを出すと、湖の着物袖の水を丁寧に拭き取っていく

「濡れちゃったね」
「濡れちゃったじゃねー。濡らしてんだろ」
「わざとじゃ無いもの」

「お前ら…兄妹みたいだな」
「…こんなめんどくせー妹はごめんだな」
「っひどい、幸。いいもん、湖には優しい兄さまいるもの」

ベチンと、幸村の額を湖が打つ
いや、見事に入ってしまった

「あ…」

そのいい音に、湖も言葉を失ってしまう

「ご、ごめん。痛い?」

手を避ければ、幸村の眉がぴくりと動くのだ

ベチンっ!

「いっ・・!?」
「ばーか…」
「っ…痛いよっ幸っ」
「ちょっと、そこで待ってろ」

幸村は手ふきを湖に手渡すと、立ち上がって坂を上っていく
その後ろを政宗も追った

「幸?」

振り向いた幸村は、三成に声を掛けた

「そいつのこと、頼む」
「お任せください」

その緊張感に鈍い湖でも感じてしまう
心拍数が上がった
何かが起ころうとしている

「っ…幸、政宗」
「大丈夫だ。なんにも心配するな」
「三成、そいつ捕まえておけよ」

坂を登りきると二人の背中だけが見えた
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