第4章 四日目
こいつは少々の会話。
特に俺が命令口調の時は返事をする。
なにかをしろ。やれ。言え。
などには短く返事を返す。
何か彼女の心の機微や、意見を求めるような質問には、あのお決まりのコマンドが返ってくる。
ただ。
今回の質問はきっと微妙な位置づけだったのだろう。
できるか?というYESかNO。それ以外の答えのありそうな質問。
彼女の中で即決してYESと答えなかった。
「風呂へ案内する。ついてこい。」
「はい。」
俺の貸した少し大きな服を着て、すたすたと足音を立てずに歩いてくる。
幸い誰ともすれ違うことなく風呂場へ着いた。
「さっさと入ってこい。待っている。」
「はいっ。」
慌てて中へ入って行ったが、やはりそこは貴族の家で育っただけはある。
所作は美しい。
中からは風呂に入っている生活音。
少しホッとした。
仮設だが、俺の部屋に作ったベッドに寝かせ「寝ろ。朝には起きろ。」と一言添えて。
俺も寝る。
こいつが寝ている間に仕事もすべてやっつけ、近々やってくるであろう壁外調査の事もやらなくてはならない。
加えてこいつの事もやらなければならない。
何となく扱い方は掴み始めた。
今回の風呂の事で、なんにも出来ない子猫ではない事は何となくわかった。
しばらくこのまま試して行こうと思う。
・・・