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観察日誌  リヴァイ・アッカーマン

第182章 開けてはいけないパンドラの箱、開けますか?


『あれから半年』


久しぶりにこのノートを広げた。


あれから半年は経っただろうか。
いや、それ以上経ったかもしれない。

書き終わったら一度読み返してみようと思う。

ウリエと出会って一年以上。
今まで気にならなかったのは俺がそういう物に興味がないからだ。

ウリエが唯一持っていたサファイアのネックレス。
こいつは宝石やその他女っ気のあるものにあまり興味を示さないのに、それだけは女々しく大事にしている。

出掛けた際、ふと気が付き「盗まれねぇようにしろ」と注意すると人が変わったように鋭く雰囲気を変えた。

初めて見たウリエの雰囲気の意味が知りたくて、夕食を終え部屋に戻ってきてから少しそのサファイアの話を聞いた。

「いつから持っていたのか、どなたに貰ったのか分からないのですが、とてもとても大切な物だと言う事だけは分かるのです。」
「そんなに高価そうなものをか?」
「高価ですよね。きっと。でも、本当に思いだせないのです。」
「父親か?」
「どうでしょう。血縁、では無いような気がします。」

ウリエは話しながら、自分の洋服ダンスの奥の方からサファイアのネックレス(チョーカーというらしい)を取り出して、俺に見せる。

「何となくですが。この青い色が似合う人だったと。」

そういいながらサファイアを見るウリエの目は、思わずそのサファイアを砕いてやりたくなるような、愛しい者を思う切ない目に見えた。

この俺が「詩」みたいな事書いているが、本当にそういう目だったんだ。
遠い記憶を探る老人みてぇな。

「お前、小さい頃どんな生活してたんだ。」
「そういえば、あまり覚えていません。」
「は?お前、父親が死ぬまで屋敷で暮らしてたんだろう?」
「そんな記憶もある様な気もしますが。」
「曖昧なのか?」
「はい。」

そこらへんの記憶が薄いって、痴呆かと病気を疑ったが、こいつの生い立ちを考えれば、本能的に記憶をしまい込んでいてもおかしくはないと思い直す。

「詳しく調べた方がよろしいでしょうか?」
「いや。思い出す必要もないだろう。」
「はい。」

辛い記憶をわざわざ思い起こす必要はない。
また、人形に戻られても面倒だ。

それに。

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