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観察日誌  リヴァイ・アッカーマン

第157章 百五十七日目



ウリエはやはり俺の予想通り、ジークリットを連れて日当たりの良い丘で本を読んでいた。

声を掛ければ本から顔を上げて、昨日の事を質問してきた。

「結婚とは何でしょう?」
「愛しあう男女とは?」
「相手を好くという事は?」





「リヴァイさん?」
「あ?」
「いえ、あの……」

俺の名を呼ぶウリエの手元の本が目に入った。
タイトルは恋愛心理学。
また、随分難しい物を読んでいる。

「ハッキリ言え。」

好きになった相手とずっと一緒に居る事が結婚なら。
私はリヴァイさんと既に結婚しているという事でしょうか?

「は?」

俺がその時素直に思った感情はただ一つ。
安心。
こいつは俺から離れていく事は絶対にないという安心感。

ウリエの勘違いも甚だしいが、俺はその勘違いを嬉しいと思った。

「ウリエ。お前は一つ大事な事をすっ飛ばしてる。」

キョトンと俺にそのすっ飛ばした事とは何かを求めるような顔を向けてくる。

だから俺は教えてやった。

「これはキスだ。お前は嫌だと思ったか?」
「いいえ?」
「じゃぁ、あの男にされた時はどう思った。」
「不快でした。」

うろたえることなく答える。
やはりすっ飛ばしてる。

「なぜですか?」

好きには、ライクとラブがある。
そう言葉の違いを説明してみたが、きっと今のウリエにはピンときては無いのだろう。

「お前が俺を好きだからだ。」
「はい、好きです。」

躊躇もなくそう言う恥ずかしい事が言えるのだから、理解してない。
普通の女なら言い淀み恥ずかしがって顔を赤らめることだろう。

「……まぁいい。お前にその違いがわかるようになるまで、俺が面倒を見てやる。」
「はい。」
「いいか。他の人間に付いてこいなどと言われても絶対に何処へも行くな。」
「はい。」
「俺から離れるな。絶対にだ。」

なぜ?その言葉が出てくる事は無かった。

今日もウリエは上機嫌でノートに何かを書いている。
俺もそろそろやめにする。





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