第1章 出会い
「ようこそ、ホテル クロウへ。…大丈夫?寒かったでしょう?そろそろ西谷がタオル持って来ると思うから待っててくださいね。」
「はい、すみません。」
「いえいえ、困った時はお互い様って言いますから。…あ、ここに名前お願いします。」
ペンを差し出されて、名前を書く。
緊張と寒さで手が震えちゃったせいで字がよれてる…。
「ごめんなさい、字がよれちゃって…」
「いやいや!綺麗な字ですよ!…天崎柚季様、ですね。」
「はい。」
「すんません!タオル遅くなりました!龍にコーヒー淹れて貰ってて。」
そう言って階段の奥の方から来たのはさっきの元気そうな西谷と呼ばれていた男の人とさっきと違う坊主のちょっと怖そうな男の人で、それぞれタオルと湯気の立つコーヒーカップを持っていた。
「お、西谷気が利くじゃん。」
「もう少し早ければ言うことなかったけどな。」
「うっ…これでもかなり急いだんすよ!…あ、すんません、どうぞ。」
「コーヒーもどうぞ。熱いんで気ぃ付けてください。」
「ありがとう…ございます。」
ふんわりしたタオルを肩にかけて、温かいコーヒーを飲んだ。
…美味しい。
さっきまでの緊張が少しほぐれてホッと息をつく。
「…緊張、解けたみたいっすね。良かった。」
目の前の西谷さんがそう言って笑い、もう一度お礼を言おうとした時、2階に続いているらしい階段から2人の男の人が降りてきた。