第1章 出会い
…そして数分後に着いたホテルはヨーロッパのお城を小さくしたような見た目の、かなり豪華そうな建物で少し尻込みしそうになる。
こ、こんなホテルにびしょ濡れでドロドロの私なんかが泊まって良いんだろうか……と思っていたら傘をさしてくれていた澤村さんが不思議そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうかしましたか?」
「え、あ、あのー…ほんとに私なんかが泊まっちゃって良いんですか…?………こんな泥だらけで、ひどい格好してるのに…。」
「大丈夫ですよ、何も気にしなくて平気ですから。」
どうぞ、と促されて扉の前の階段を上り、澤村さんが扉を開こうとした時に内側から開いた。
「あぁ、やっぱり大地か!道路、どうだっ………ん?」
「旭さーん、大地さん戻ってきましたー?…お?大地さんどうしたんスか、その子。」
向こう側から姿を現したのは澤村さんより背の高い長髪で顎髭のちょっと強面な人と私とそんなに変わらなそうな背の前髪だけ金髪にした男の人で、2人にじっと見られて思わず一歩後ずさる。
「おいおい、お前らそんなにじっと見るんじゃないよ、特に旭。お前、見た目は威圧感あるんだから。彼女はこの大雨で道に迷ったそうだ。月島と山口に奥の部屋の用意を頼んでくれ。それからタオルを彼女に。」
「あ、じゃあ俺タオル持ってきます!旭さん、月島達に言っといてください!」
「分かった。用意出来たらホールに伝えに来るよう言っておくな。」
そう言って2人はあっという間にいなくなって、少し呆気に取られる。
「驚かせてすみません。…一応、受付して貰っても良いですか?お名前だけで良いので。」
「あ、はい。」
…ホテルの中は外と同じように豪華な雰囲気で、床を汚してしまうんじゃないかと少しビクビクしながらフロントまで澤村さんの後をついて歩く。
フロントには灰色がかった髪の左目に泣きボクロのある、凄く温和な雰囲気の男の人が立っていた。