第9章 不安
慌ててマーレを追いかけて立体機動装置で森に入っていくエレン。
しかし、すでにマーレの姿は見当たらなく、手あたり次第に探すハメになってしまった。
マーレが見つからない時間が長引いていくうちに、エレンの中の不安も広がっていく。
もし、この森の中でマーレさんが倒れていたら?
もし、マーレさんの体調が急変してたら?
焦りばかりが募っていく。
パシュッと、聞きなれた立体機動装置の音がして、そっちへ飛ぶエレン。
行った先では、木の太い枝にワイヤーを刺して、宙ぶらりんの状態のマーレがいた。
エレン「マーレさん!!」
マーレ「・・・あ、エレン。」
エレン「何処まで行っちゃってるんですか!探したんですよ!!」
マーレ「すまない。まさか森の反対側にまで出てしまうとは思わなくて。」
エレン「・・・え・・?」
エレンがマーレを見失ったのは精々10分程度。なのに、その間にマーレは森の反対側にまで行き、ここまで戻って来た。
この森は、ウォール・ローゼ内では大きいほうだ。普段練習してて森の反対側まで出た事など一度もない。
マーレ「?エレン??」
ゾクリとしたエレン。
完全復帰していないマーレが、今この現状なら、マーレが全盛期の頃は、もっと凄かったという事なのだろう。
人類最強の双子という肩書きは、予想していたよりも遥かに重かった。遥かに自分から遠かった。
彼らはその肩書きを背負って、何を思っているのだろうか。
エレン「・・・とりあえず、戻りましょう?マーレさん久々の立体機動で疲れたでしょう?」
マーレ「・・正直疲れた。悪い、俺が言いだしたのに。」
エレン「全然大丈夫ですよ!俺暇なんで!」
彼らが、一気に遠くに感じた。