第14章 夜のプリンセスの化身 ーーーーー全員
[えっ、]
スッ、と頬に手をそえられた。顔をこの人の方に向けた。
[ウフッ····]
あーーーーー
美女。美女が目の前に立っていた。グロスが艶々に塗られた唇を何とも甘ったるくゆるませていた。
睫毛の形がとても綺麗な、私を捉える、目尻が伸びた瞳は『誘惑』という文字が最高に似合う。
ただ、微笑しただけなのに、
なんて、綺麗なひと············
[とても素敵なお顔なんだから、大事になさって?]
[あっ、あっ、ははい··]演技さえ忘れてしまった。
私の顔から手が離れる。ブワッ、とフワフワの巻き髪から甘い匂いがした。
[ねぇ、] [あっ、うっ、な、なんでし··]
と言った時には、美女はカッ···、とヒールの音を鳴らしてホストの元へ歩き始めていた。
[そんな顔されても困るわ···]
[???]
体のラインが強調された服を着ている美女は、そのまま言った。
[男性じゃないみたいね]
[!!]
心臓を射抜かれた、とはまさにこの事。
私は、彼女に毒を入れられたように、カタカタと震えていた。
彼女の後ろ姿を、無意識にうっとりと、姿が見えなくなるまでずっと見続けた。嗚呼、後ろ姿だけ見ても、美人な人だって分かる··。
[あの?]
[··]
[あの!?]
[あっ!も、··申し訳ありません。]
私は我にかえり、男の低い声をスマートに出して頭を下げた。
というか、と冷たい女性客の視線を浴びながらウィッグが落ちないか不安になりながら思った。
ヤバい。見惚れていたら、男じゃないみたいって言われた!!!
あああ!めっちゃ美じっ··えええ!?!?あんな美人な人っているの!?いや、いらっしゃるの!?!?しかもすごいボンッキュッボン!!!ていうか、もう女って事バレ··エエエ!?!?あんな··めっちゃ美人な人い
《以下省略》
[······]
うわっ、何か1人のちっちゃいホストから物凄い睨まれてる感半端な··。
って、ん?菜太郎お前美人様々様々をそんな目で見てんじゃねぇよ!!!!え?!狙ってんのお前はこっぴどくフラれろ!!!
[·····················]
一瞬、客の声が何も聞こえなくなった。[ちょっとお!?]
[ごめんね、あなたがあまりにキレイで緊張しちゃって···]