第14章 夜のプリンセスの化身 ーーーーー全員
[いらっしゃいませ。]
固すぎず、いやらしすぎず、程良い笑みで。
くれぐれも女性に不快感を抱かせる行為は絶対禁止。
今夜も、美男子とお客様の癒しの恋物語が、灯されたシャンデリアと共に華やかに始まる。
香水の濃い香りがふわっと鼻の奥まで入ってきた。
自分が最高の姿になるような化粧をしたたくさんの女性達。
[ご指名は?]
男声で滑らかにお客様に伺う。
[ん~、今日もあの人っ]お客様がチラチラ目配せする先には、隼人さん。
[ご指名ありがとう、また来てくれて嬉しいな。前髪切った?素敵だね。お仕事お疲れ、はるちゃん]
永久指名、
という言葉があるらしい。でも、ここはそれは無いことになっている。
な、慣れねェェェェッッッッ!!!!!!
私はご指名は?とお客様に聞きつつ心の中で上半身を後ろにガバッッッッッ!と反って大シャウツッ!!
いやまだウィッグに違和感あるけど慣れてきたけど!おっとこー声っがっ難しすぎて一文字一文字意識して言わなきゃああ!
いや全然声高くないけどねむしろ超~低ッの部類だけどね!
人見知りも隠す程良いスマイルムズカシイシイ!え?ボディー隠し?ヘッ、私くらいのボデーになるとサラシが全然キツくないんだ。次元が違うだろ?
[あの無表情の人で]
[はっはいっ!]アウチッ!!つい考え事して裏声の女声デチマッタヨおーいぇー。
[クスッ。]
笑われた方を反射的に見た。···ム!?で、デカイい!!
[可愛いわね。] [んハッ!?]
げほごほと見苦しい音聞かせてごめんなさいお客様!言われたこと女子のありがたいお世辞以外(それでもめっっっっちゃ少ない)無いもんで!
ってこの人この前私を指名したいわって言ってた人!緊張し過ぎて顔覚えてないけど声同じ!
[···]
そ、それにしても···。ゴクリと生唾を飲み込む。
でっかい、
いや下品、メッチャおっきいいいい!!!!!
胸!!
[あら?]
[ハハバッ!!?]と思いっきり女の裏声。
あああ顔真っ赤になってきてんの自分でワカルワ!
そして菜太郎の視線痛ェ!
何うっかり人様のけしからゲフングフン、乳様見てんだ!嗚呼服の上からでも素晴らしゲフングフフフ。
乳様の敵is私!!と自分の頬にドグシッ!!!
[ダメよそんな事したら··]