第8章 夢見る少女は揺れ動く
食事の後はそれぞれトイレに行って洗面台で歯を磨いた。ジャックとメイソン、ベンジャミンがタバコを吸いに外に出ている間、車の中でノアとエミリーは2人っきりで話した。ノアと出会った時は14歳で幼い感じがしたが今では23歳になっていてしっかりした顔つきになってきた。
最初はぶっきらぼうな性格でエミリーのことを受け入れてくれなかったノアとも次第に打ち解けていった。
「ノアも23歳か。早いわね。」
エミリーは冷静に言った。
「そりゃそうだよ。だってエミリーが17歳だろ?もう出会って10年経ってるんだぜ。それくらいになるよな。」
ノアが笑って言った。こんなに笑うノアを見るのは初めてだったのでなんだか嬉しいなとエミリーは思った。
「ふふっ、そうね。出会って10年か。最初はあんなにぶっきらぼうだったノアがこんなに笑うなんて。」
「なんだよ?何が言いたい?」
ノアが後ろの席から身を乗り出して言った。顔はムッとしていた。
「大人になった気分はどう?」
「まぁまぁかな。酒は飲めてよかったけどそれくらいかな?俺はタバコ吸わないからな。」
「そっか。」
ノアの呆れ顔に相槌を打つエミリー。
「10年も一緒にいるとノアのこともわかってきた気がしたわ。」
「そうか?そっちいっていい?」
ノアがエミリーの前の席に移動してきた。
「どうしたの?」
エミリーが横を向いた時だった。ノアは周りを警戒しながら見回すとエミリーの方に向き直って言った。
「エミリーが好きだ!今気がついたんだ。最初は目障りだと思ってたけど今は違う!」
ノアはエミリーのワンピースの襟を両手で掴んでぐっと顔を近づけた。
ちゅっ・・・・・。
車内に短いリップ音が響き渡り、そっと流れる心地よい風が静かにムードを作っていた。