第8章 夢見る少女は揺れ動く
キスした後、エミリーは静かに目を開けてノアをまじまじと見つめた。こんなにノアの顔を長く見るのは初めてだった。
「・・・・。」
2人の間に沈黙が流れる。
「急にごめん、なんか抑えられなくて。」
「ううん。いいの、嬉しかったわ。ありがとう・・・。」
2人は静かに抱き合った。エミリーがノアの気持ちに応えるように今度は首に抱きついていた。
しばらくしてジャック達が戻ってくると2人は慌ててその場から離れてノアは後ろの席に戻った。
「お前らどうした?」
メイソンが怪訝そうに聞いた。
エミリーとノアの頬は赤くなっていた。
「なんでもないよ。」
ノアが短くそう言った。
「なんかあったんじゃねーの?」
ベンジャミンが笑いながら聞いてきたのでエミリーが咄嗟に何でもないと首を横に振ったのでそれからはこの話は話題にならなかった。
翌日はメキシコの先の方に進んでいた。アメリカを出た時はシウダード・フアレスの方にいたがだいぶ進んでヌエボ・ラルド、トレオン、モントレー、サンライスまで来ていた。
「だいぶ真ん中まで進んできたな。この先のオリサバ山は気をつけろ!噴火するかもしれないぞ。」
ジャックが運転しながら後ろのみんなに促した。
「はーい。」
みんなはそれぞれ返事した。
朝ごはんはエミリーの超能力で盗んだサンドイッチを車内で食べた。
「美味しい!」
皆んなが自然と笑顔になった。
ノアはサンドイッチを食べた後にエミリーの肩をつついて紙切れを渡した。エミリーが紙切れを開くと何か書いてあった。
"俺たちの恋仲はしばらく秘密にしていよう。バレたらその時に考えよう。いずれはバレると思うけど"
エミリーは後ろを振り返って指でグーサインを作った。
車は途中でガソリンスタンドに入ってどんとん進んでいった。
「ジャック、新しいカードを探したいからこの使っていたのは持ち主に返すわね。」
エミリーがジャックに聞いた。
「それが良さそうだな。頼むぞ!」
「了解!」
ジャックの言葉にエミリーが頷いた。