第8章 夢見る少女は揺れ動く
翌日、エミリーは昨日書いた手紙を超能力でハリウッドまで送った。
「パパ・・・元気でね。」
それから車に乗り続けて、車の中で寝泊まりしながらメキシコへとやって来た。
「やった~メキシコだ。」
メキシコについてほっと安堵したのもつかの間だった。
やはりメキシコでもあちらこちらにエミリーの指名手配の写真が貼られていた。
「こうなったらやるしかないわ。」
少ないお金で整髪剤を手に入れて髪の毛を染めた。初めての赤茶色になった。
「これでいいんだわ。」
今は整形するお金がないからこれで我慢するしかなかった。
「・・・・。」
エミリーの葛藤ぶりをノアが後ろから見つめていた。
「赤茶色も似合っているじゃないかエミリー。」
ジャックが褒め称えてくれた。
「いいじゃん似合ってるよ。」
メイソンとベンジャミンが言ってくれた。
「いいんじゃね?」
ノアはその一言だけだった。
「ありがとう。」
他の皆もうまく変装して街の中を歩いたけれど案外バレなかった。
「ここからは偽名を使おう。俺はジャクソン!ノアはノアール。メイソンはガリック、ベンジャミンはボブ、エミリーはエリーナだ。いいな?」
「ノアールってなんだよ!・もっとマシな名前はなかったのかよ?」
「あら、ノアールお似合いね。」
エミリーはクスクスと笑った。
「まずは資金調達だ。最近、金がカツカツだからな。エミ・・・じゃなかった。エリーナの超能力でまた万引きしようと思う。」
「いいけどそれだけだと食料しか手に入らないわ。ガソリン代はどうするの?」
エミリーはジャックに聞いた。
「そうだな。銀行に入るのは今はまずいしな・・・。まてよ!?誰かのカードを盗んで暗証番号さへわかれば・・・。」
「私、ハッキングできるかも。まずは千里眼で手当たり次第にバッグの中身を調べるわ。でもそこからお財布の中身までなんて調べたことないからうまくいくかしら?」
「とりあえずやってみてくれ。」
「わかったわ。」
ジャックに促されてできる限りのことは尽くした。
「ああ~見えないわ。もう少し。」
エミリーが建物の陰に隠れて千里眼を行っている間にジャックとベンジャミンで後ろを見張っていた。横をノアとメイソンで見張っている。
「ああ、この財布はダメそうね。こっちのは?」