第1章 プロローグ
それからエミリーは母がカルト集団に入らないようにとカルト関係の雑誌やパンフレットをタンスの中に隠したりした。しかし母に直ぐに見つかってしまった。時には燃えるゴミの中にパンフレットを混ぜて捨てたりもした。しかしこの娘の行動が気に食わなかった母は初めて娘の頬を叩いたのである。あんなに自慢していた我が娘がいつしか邪魔な存在となっていった。
「なんてひどい子なのかしら?私はあなたをそんな子に育てた覚えはないわよ?私を見るその目が気に食わないのよ。」
それから必要以上にエミリーの髪の毛をつかんだり叩いたり時には足で踏んづけたりもした。そんな妻であり子供達の母を夫である父は散々と彼女に注意を促してきた。
「よさないか!これじゃまるで・・・。」
「あら、虐待とでも言いたいの?これは躾のほんの一部にしか過ぎないわ。」
母は躾と言い張るが父は黙って見ていられなかった。
「これが躾だって?どう見ても虐待じゃないか?最近の母さんはどうにかしてるよ。」
父は呆れて言った。
「私はあなたの母親じゃありません。いつまでも母呼ばわりされても困るわ。新婚だった頃は名前で呼び合っていたじゃない。」
「でも今は子供がいるんだから子供を最優先に考えるべきだろう?」
父は母に問いかけた。しかし母は反論してきたのだ。
「子供、子供って言われても困るのよね。ジェイデンだって悪口ばかりだしこの子だって悪戯すぎるし、この家はおかしくなっちゃったんだわ。以前の仲良し家族にはもう・・・戻らないのよ。」
そして母は涙ながらに訴えた。(ここでいうジェイデンとは兄のことです)
「そんなんことないよ。ママ、私今度はしっかりするから!」
エミリーは母に謝ろうと必死だったが母は彼女の言葉を聞き入れてくれなかったのだ。
「おい、エミリーの言葉も聞いてやれよ。俺達家族だろう?」
父は母に機嫌を直してもらおうと必死だったがあれこれ言っても無駄だったのである。
「家族?こんなの家族でもないし私の思い描いていたのとは違うわ。もういい、あなたとはおしまいよ。今すぐに別れてちょうだい。」
別れる・・・この言葉を聞いた時エミリーはこの世の終りを感じ先の見えない未来に絶望した。もう後には引けない何かが迫っている気がしたのだ。