第7章 新しい環境に溶け込もうとしている今
「確かこんな感じだったかな?とても優しかったの。母親が私に酷い虐待をしていた時もいつも私を庇ってくれてたし。お父さんが家の中で1番の常識人だったわ。よく母親に注意してたわ。でも離婚裁判があってその時に半年に一回の面会っていうのが決まったのね。私はすぐにベンジャミン達と出会っちゃったから、その後のお父さんとは会っていないの。そこが一番残念だったわね。お兄ちゃんの話だと私が家出したのを聞いて警察に被害届けを出してくれたみたい。もしかしたら誘拐されたんじゃないかって?疑われても仕方ないわよね。」
エミリーはベンチでため息をついた。
「かっこよさそうなお父さんだな。」
ベンジャミンは紙に描かれた似顔絵を見て言った。
父は金髪で背が高く鼻筋が通っていて鼻の下に髭が生えていた
瞳はグリーンだ。エミリーとどことなく似ていた。
「でも絶対にお父さんを探して見せるんだから。」
エミリーは立ち上がった。
「もう遅いからボスの所に戻りましょう。」
「ああ、そうだな。」
ベンジャミンは頷きエミリーとアジトへ向かった。
★★★
「あの少女はどこへ消えたんだ?」
アメリカ中の警察がエミリーの行方を追ってから十数年の時が経っていた。これはエミリーちゃん失踪事件として大きくメディアに報じられたがそれは過去のこと。今では人々の関心は無くなっていた。
「一体どこで何をしてるんですかね?」
一人の警察官がため息をついた。
「いや、とっくに死んでるかもよ?」
別の警察官が言う。
「それはないな、だって国際指名手配に彼女の顔が出てるんだからね。どこで何をやらかしているか知らないけど一刻も早く捕まえなきゃな。今に見てろよ。」
★★★
翌日もエミリーの父親探しは続いた。エミリー達は町中を歩き手がガリを探したが上手くいかなかった。
「だめだ。手掛かりがまるでない。エミリー、父の名前は憶えてるか?」
ジャックがエミリーに聞いた。
「確かジョナサン・カールソンよ。」
「なるほどな。」
エミリーの言葉にジャックがにやりとした。
父の特徴も名前もわかっている。あとは小さくてもいいから情報を掴むだけ。
一刻も早く父に会いたいという思いが彼女の中で募っていた。
「お願い、見つかって!」