第6章 あれから時が経ってー
「おい、エミリーどうした?」
ベンジャミンがエミリーの顔色を窺った。
「お兄ちゃんとお父さんはどこ?」
「そう言われてもなあ。だったらエミリーの家を尋ねればいいんじゃねーの?俺が行ってあげるからさ。」
「うん。」
エミリーは頷いた。
ベンジャミンが一緒に行ってくれると言った。
「みんなで行くと怪しまれると思うから。」
「わかった!俺らはアジトの方へ向かってるから何かあったら連絡してくれ。」
「了解です。」
ベンジャミンはジャックと言葉を交わしてエミリーと歩き出した。
「確かカールソンっていう名字だったよな。あそこじゃね?」
ベンジャミンが指をさした先にはエミリーがかつて住んでいた家があった。
エミリーがドアの前に立ってノックする。その様子をジャックは陰から見ていた。
コンコン。
ガチャッ。
「はーい、どなた?あら、見かけない顔ね?」
そこには小皺が増えた母がいた。
「私のこと覚えてないの?それよりお兄ちゃんはどこ?」
エミリーは母を睨んで言った。
「そんな怖い顔する人なんか見たことがないわ。えっお兄ちゃんって、あなた・・・まさか・・・エミリー?」
母は驚いて言った。
「そうよ。ジョナサン・カールソンはどこに行ったの?」
「まあ、のこのこ何しにやって来たのかと思ったら9年間どこで何をしてたんだか。私が折角心配して警察に被害届も出したのにねえ。」
母はエミリーの首を掴んであざ笑った。
あの時と変わってないじゃない。
すると後ろから誰かの声がした。
「エミリーなのか?母さんの言ったことはでたらめだぞ!」
「お兄ちゃん?会いたかったわ。」
エミリーは自分の足で母の足を蹴ると兄のもとへ飛びついた。
母はその拍子でよろけて尻もちをついた。
「どこで何をしてたんだよ?母さんと2人で大変だったんだぞ!」
「お兄ちゃんはここに今でも住んでるの?」
エミリーの兄は23歳になっていた。
「いや、今は仕事してるから一人暮らしだよ。母さんの所は時々来て世話してるけどさ。」
兄は笑顔でエミリーを迎えてくれた。
「今は私のことを話している暇はないの。ごめんなさい!」
すると母がやっと立ち上がった。
「こんなことをするなんて酷いじゃない!」
「あなたがしたことに比べればどうってことないでしょ?」
エミリーはくすっと笑った。