第5章 少女の瞳に映る黒い影
「ジャック、あの銃はあそこの窓から出てきたんじゃないかな?だってあそこの窓が割れてるんだもん。」
ノアが窓の方を指さした。
「でかしたぞ、ノア!」
ジャックは割れた窓の方へ駆けて行った。
「エミリー?」
「ジャック!ここから出れないの。あっ。」
そこに手下がエミリーのいる部屋に入って来た。
「お嬢ちゃん、随分と派手な真似をしてくれたな。このお返しはきっちり返してもらおう。」
「やめないか!くっそ。」
ジャックは窓の外からしか声を出せず悔しさで顔が歪んだ。
★★★
その頃ベンジャミンは建物の入り口を見つけていた。
「あった!うわっ誰か来る。」
ベンジャミンは慌てて物陰に隠れた。その時ボスとみられるあの大男が外に出たのを隙にドアが開いた瞬間に建物の中に入ることができた。
ウィーンウィーン!侵入者発見、侵入者発見!
ベンジャミンが中に入るとともに建物内でサイレンが鳴った。
「しまった。中に誰か部外者が入ったな。」
「そこまでだぞ!」
そこにメイソンが銃を構えて男に向けた。
「遊びはよしてもらいたいな。」
男は建物の中に戻って行った。
「くっそー。」
メイソンが銃を撃ったのも虚しく男は建物の中に消えて行った。
ベンジャミンは急いでエミリーのいる部屋を探した。
「ここじゃない!違う、ここじゃ。」
「何をしている?」
「見つかった!?」
大男がベンジャミンを追って走り出した。しかし返送が得意なベンジャミンの走り早く男も追いつけない早さだった。
男はトランシーバーで他の手下を呼び彼を追うように指示を出した。
バン!
「エミリー!」
「ああ、ベンジャミン!」
「プリンス様のお出ましってか。」
「ちげえよ。」
手下はベンジャミンの胸倉を掴んで言った。
ジャックも外でエミリーに手を差し出すがエミリーの背が低いため届かないでいたのだ。
ドサッ。
ベンジャミンは床に投げ倒された。
「酷いわ。関係のない人まで巻き込んで、私だけが目的じゃなかったの?」
エミリーは手下に必死に訴えた。
「邪魔者が入ったんでね。」
手下は鋭い目を向けた。それは冷酷で残酷な目であった。エミリーはこの男の目を見た時にお母さんのことを思い出していた。憎たらしいお母さん、私を散々躾と言い聞かせて虐待をしてきたお母さんを。