第4章 必ずしも正義が勝つとは限らない?
エミリー達はイギリスの中心地から随分離れ、裏道を通り地下の階段を下りて行った。
「ここに研究チームがあるんだ。」
ジャックの案内で地下に降りると薄いガラスで覆われたドアがあった。ジャックはすかさず暗証番号を入力してみんなを中に入れた。
「ここでの情報は外部に漏れないように注意するんだぞ。」
「はーい。」
研究チームの中に入ると見慣れないいくつもの機械があった。
「これは何?」
エミリーがモニターを指をさしてジャックに聞いた。
「これはウィルスの拡散を調べるものだ。そうだ、エミリーやってみるか?」
「うん、私にもできるかな?」
エミリーは椅子に腰かけモニターを見た。そしてキーボードに文字を打ち込んでいく。
「そうだ、ウィルスを拡散させて人々が混乱している時についでに爆破予告も出しちゃえばいいよ。」
エミリーは操作しながら笑顔で言った。
「それは名案だな。ということは錯乱を狙う訳だな。」
ジャックが頷いた。
「そうだよ。またあの数字のメッセージを使ってあげる。今に見ているがいいわ。」
「エミリーって本当に悪役に向いてるな。ハリウッドにでも進出する気?」
そこにベンジャミンがやって来て笑った。
「冗談はよしてよ?私はそんなに人に媚びを売るのが好きじゃないのよね。」
「でもあれだけ超能力の大会に出ていた君がねえ。」
ベンジャミンは眉をひそめた。
「ああ、そうね。あの頃は母の期待に応えようと必死だったんだわ。でも今は懲り懲りかも。だからこうして私の能力を見世物みたいに扱わないで実力を試すために使っているんじゃないの。」
エミリーはベンジャミンの方に顔を向けてほほ笑んだ。
「まさか、私に超能力があるなんて思いもよらなかったし、大会に出ることで人気となったなんていまだに信じられないことよね。世間の人達は私の超能力に取りつかれていたし、気が狂っていたんだわ。本当にどうかしていたわよね。」
エミリーは呆れた顔をしてモニターの方へと向き直った。
「それでウィルスだけどこれでいいかしら?」
「もうできたのか。エミリーはやることが速いな。」
ジャックは感心してモニターを見た。
「いいだろう。早速実行に移ってくれ。」
「了解しました。」
エミリーが最後の操作に取り掛かりボタンを押すとモニターの映像が乱れ始めた。
「どうやら上手くいったようね。」
エミリーはこの時きっと成功すると確信していた。