第1章 プロローグ
エミリーは兄の次に長女として生まれた子だ。両親は初めての女の子ということもありエミリーのことを良く可愛がってくれた。彼女の名前は母が付け、アメリカで人気の名前トップ10の中でも3位に入る人気の名前だ。そんなエミリーの名前がつく有名人を上げれば可愛らしさが目立つ素敵な名前だ。
幼い頃のことはあまり覚えていないというエミリーだが彼女のあまりの可愛さに兄が父からカメラを奪って必死に撮影していたのだそうだ。そんな兄を見て父が”将来はカメラマンになるのかな?”とにっこり兄に話しかけていたと母がエミリーに語ってくれたことがあった。一昔前までは家族で旅行に出かけたり、家族の思い出を残した家族ムービーなんかをリビングで一緒に鑑賞して大笑いしたこともあった。
エミリーには兄弟は兄しかいなかったため立ち上がりが出来るまでになると兄のおもちゃに興味を持ち一緒に遊ぶようになった。時には喧嘩をして主に兄が怒られていた。それでもそんな兄とは仲良しだった。それからエミリーの超能力が発見されたのが保育園に上がる前のことだった。3歳のエミリーは母と保育園に行く準備のため鞄や落書き帳などを揃えるために雑貨屋に立ち寄った。エミリーの通うこととなった保育園では鞄は肩掛けのなら色やデザインは自由なためどの鞄にしようか悩んでいた。
「好きな色のを選んでいいわよ。」
母がにっこりとエミリーに話しかけた。
「でもどれがいいのか迷うなあ。」
エミリーはもうすぐ保育園に行けるワクワクで気持ちがいっぱいになりお店の中を走って回った。
「エミリー、走ると怪我をするから歩いて行きなさい。」
そんなエミリーに母が注意したが案の定、彼女は転んでしまった。
「だから言ったのに・・・ん?」
母はエミリーが転ぶ光景を目で疑った。
エミリーが転んだ拍子で肩に下げていたポーチが開いて中身が飛び出した。ごく普通の光景にも見えるがこの時の母はエミリーのポーチの中身が浮いて見えたのだという。
「エミリー!」
母ははっとして我が子に駆け寄り痛みの有無を確認した。前までは転んで散々泣いていたエミリーがぴたっと泣かなかったのにも驚いた。
「だって私はもうすぐ保育園に行くんだから。泣かない強い子になるって決めたの。」
母は嬉しさのあまり我が子を抱きしめて頷いた。
「やれば出来るじゃない。」
この言葉がエミリーの自信へと繋がったのである。