第1章 プロローグ
この日の夕食時にテーブルを囲み家族で食事をしていると母が愚痴をこぼすように父に嘆いた。
「あの子ったら、今日は学校を休むなんて言ったのよ。信じられないわ。」
「まあ、誰だって憂鬱になる時はあるさ。暫くすればまた学校に行くようになるだろう。エミリーだって勉強のしすぎで疲れたのかもしれないしな。今は静かに見守ろう。」
父は母を宥めて言った。
「見守ろうですって?あなたは何を言ってるのよ。エミリーは学生なんだから勉強するのが仕事でしょう?それなのに今日だって学校に行かないで何してるのかと思えば部屋で勉強していたのよ。」
母は泣き叫んでいた。
そんな両親のやり取りをエミリーはうんざりして見ているし、兄はそっぽを向いてご飯を食べていた。
「母さん、それにエミリーが少しばかり有名になったからクラスの子も羨ましくてついからかってしまったのだろう。なぁ、エミリーそうだろう?」
父はエミリーをじっと見て言った。
”お父さんもお母さんもどうしてそんなことばかり言うの?私のことなんてちっとも分かってくれてないじゃない。こんなのあんまりだわ。”
エミリーはこう言いたかったが家では常に良い子を保ってきたため言いたいことが言えずに半分も食べてないご飯を残して部屋へと駆けて行った。
「おい、エミリー?」
父がそうエミリーを呼び止めようと声をかけたが時は既に遅かった。そしてエミリーに続き兄も無言で部屋へと駆けて行った。
「一体、この家はどうなってしまうの?」
母が泣きじゃくり父が妻である彼女に”大丈夫さ。また家族の絆を取り戻そう”と優しく声を掛けた。
母はエミリーに”学校に行って欲しい”と訴えていたし、父は”クラスメートにからかわれていただけ”と言っていたが両親が思うほどエミリーへのいじめは軽くなかった。両親は娘のエミリーが学校で受けている数々の仕打ちを理解していないのである。ここからエミリーの自宅警備員すなわち引きこもりが始まるがその前にエミリーの生い立ちから学校で受けたいじめまでを振り返っていこう。