第3章 光と影
「私、はっきりとこの目で見たんです。ルーカスという少年がお母さんからの仕打ちを受けていた。彼のお母さんは本当にひどい人だったわ。車イスの夫を外で突き飛ばしたんですもの。それに売春婦をしていて来ていたお客さんに向かってショットガンを発射したのよ。それでルーカスは返り血を浴びたんです。」
エミリーが思いもよらないことを言ったのでジャックが驚いた。
「それって全米17州で300人を殺害・連続大量殺人犯ヘンリー・リー・ルーカスのことじゃないか。 1936年なんてエミリーはまだ生まれていないだろう?」
「そうね。私って見えるのかな?過去のことが。」
エミリーは自分の見た光景にも驚いたが自分がこんなものを見ることができたことにも驚いていた。エミリーの手を触れずに物を動かす,千里眼(透視)を持つというものだ。だとすれば千里眼で見た光景だったのだろう。しかしエミリーも今まで昔の光景など見たこともなく、ましてや存じない事件の背景を目の当たりにしたのだ。
『でも、私は違う。』
エミリーは自分にそう言い聞かせた。
これまで何が合ったの?散々ひどい目に合ってきたでしょう?私はみんなに復讐するんだから、絶対に。
「これは何か極悪な事件でも考えないといけないわね。」
エミリーは悪意のある笑みを浮かべ立ち上がると”行きましょう”と一言だけ言って歩き出した。
マフィアの世界には光と影がある。ときには地道な作業もある。でもや成し遂げなければならないことがある。
『復讐』
これがエミリーの成し遂げなければならないことだ。
あれからエミリーたちは霧の中を進み街の中心外へと戻っていた。あれは一体何だったのか?と後ろを振り返ったが霧野中の不思議な場所はもうそこにはなかった。
「先を急ごう。」
ジャックに急かされエミリー達は空港へと向かい次なる場所へ移動しようとしていた。もうここにはいられないということ、そして前の街には戻れないということがようやく確認できたのだ。
ターゲット(狙い者)は世界中探せばどこにだっている。そのもの達を如何に操れるかがポイントになるだろう。