第3章 光と影
爆竹の燃える音を背後に聞きながら歩いていると白い霧に包まれていた。そこから先のことはエミリーは覚えていない。なぜなら気を失ってしまったからである。エミリーはぼんやりする意識の中ある光景を目の当たりにした。
ー全米17州で300人を殺害・連続大量殺人犯ヘンリー・リー・ルーカスー
ヘンリー・リー・ルーカスが生まれたのは1937年。母親の名前はヴィオラといった。母親の仕事は売春婦で、父親は事故で両足を失い車イスの生活をしていた。ヴィオラは、ことあるごとに夫とルーカスを虐待し、気に入らないことがあると、角材で頭を殴りつけていた。幼かったルーカスは殴られて気を失い、病院に運ばれたこともある。
また、ルーカスに対する虐待の一環として、頭にチリチリのパーマをかけさせ、靴も履かせず女の子の格好をさせて3年間も学校に通わせた。
また、ある冬の日には、夫の存在をうっとうしく思ったヴィオラは、夫を車イスごと外に放り出した。そしてそれが原因で夫は肺炎を起こし、そのまま死んでしまった。
ルーカスがスカートを履いて鏡の前に立っている。
「お前は、あのラバが好きかい?」
ヴィオラが彼に聞いた。
「うん。」
ルーカスがそう言うとすぐにショットガンを持ちだしてきて、ラバを射殺してしまった。
『これ何?私、こんな事件知らないわ』
エミリーの頭野中は混乱していた。
するとすぐに場面が切り替わる。そこにはルーカスが返り血を浴びているところだった。
母親のヴィオラがあるお客とSMプレイをしていた時、その行為が終わった後、ヴィオラは何か気に食わないことがあったのか、いきなりお客の股間めがけてショットガンを発射した。相手は即死し、すぐ近くにいたルーカスは返り血を浴びたのであった。
『きゃああ。』
エミリーは耳を手で覆い心のなかで叫んだ。
そしてルーカスは10歳にして飲酒をし学校へ行かなくなった。13歳で窃盗を犯して刑務所へ入っている。そして出所してからは14歳で初めての殺人を犯す。犠牲者は17歳の少女だった。理由は「誘いを断られたため。」という短絡的なものであった。
***
「エミリー大丈夫か?」
ジャックの問いかけに目を覚ましたエミリーはこんなことを口にした。
「なんて彼はひどい人生を送ってきたのだろう?」
「えっ、彼?」
エミリーは何を言ってるんだとばかりにみんなが顔を見合わせた。