第1章 プロローグ
「確かにね。今はでも嫌な思い出ばかりでしょう?エミリーだってあの子に負けて悔しかったんでしょう?思い切ってだったら捨てちゃいなさいよ。スッキリするわよ。」
「でも・・・。」
こうして母はエミリーのトロフィーや今まで培ってきた功績をすべて捨ててしまったのだ。
それから徐々に母はエミリーに躾という行為を行っていった。これでは裁判前に逆戻りである。この時は兄も母に注意したが母に逆ギレされてしまい手に負えなかった。
エミリーは学校でも居場所がなく家でも居場所がなくなり途方にくれていた。
「どうしよう?」
ある日の学校帰りエミリーはクラスの子からの仕打ちに耐えてやっと公園まで逃げてきたのだ。ここはエミリーがいつも学校に通うときに通るルートにある公園だ。
「保育園の頃は友達と遊んだのにな。」
エミリーはそう呟いてブランコに座った。
「家に帰りたくないな。」
膝にはあざが出来ていて腕も少し腫れていた。
エミリーはため息をつきながらゆっくりブランコを漕いだ。するとどこからか声がしたのだ。
「あれ?君1人かい?」
「あなたはだあれ?」
エミリーはブランコから顔を出してこちらに歩いてくる男性を見た。
「僕はボスだよ。」
男性はそう答えた。
「何のボスなの?」
エミリーは不思議そうに聞いた。
「それはついてくればわかるさ。それに僕は君のこと知ってるよ。」
「ああ、一時期有名だったからね。でも今はこの有様よ。」
エミリーは悲しそうな顔をしてため息をついた。
「随分やられたね。誰に?」
「学校のクラスの子とお母さん。」
そしてエミリーは男性に悩みを打ち開けた。学校では知らない人から声をかけられたら助けを求めるように言われていたのになんだかこの人に話していると心が少しだけ落ち着いた。
「なるほどね。だったら僕らの所に来ないかい?」
男性は話を聞いてエミリーを誘った。
「僕らって?他にも誰かいるの?」
エミリーはワクワクして聞いた。
「仲間がいるんだ。君だって学校でも家でもこれじゃあ窮屈でしょう?それに君は天才の超能力者だ。君にはこんなに素晴らしい能力があるのに使わないなんてもったいないよ。だから僕が君の能力を買ってあげよう。」
男性はにっこりしてエミリーに手を差し伸べた。
「わかりました。でも私の怪我は治りますか?」
「もちろんさ。ついて来て。」
こうしてエミリーは男性について行った。