第1章 プロローグ
訪問権は、子供と会う際の頻度、面会時間、子供との時間の過ごし方、誰が送迎するのか、誕生日や祝日、長期休暇をどちらの親と過ごすのかなどが、合意書に盛り込まれる。虐待などのよほどの問題がない限り、子供と一緒に暮らさない親に対し訪問権が与えられることがほとんどのようだ。訪問権を与えられた場合、定められた時間内で子供との面会が許可される。それ以外の時間に子供を勝手に連れ出すと、誘拐罪に問われることもあるので気を付けたい。
なお、離婚の手続きを自分たちで行いたい場合、裁判所のFamily Law Facilitatorによる無料相談を利用すると良い。弁護士の資格を持った職員が、書類の書き方や手続きの方法を教えてくれる。
こうして裁判は進んでいくが一向に結論は出てこない。妻は子供たちを引き取るといい張り、夫は妻の虐待をあげて妻から子供を離したいと必死である。
「私は虐待なんてしてません。躾をしているだけですわ。何がいけないの?」
「静粛に!そこで妻と夫どちらの証言が正しいかお子さん達を事前に調べさせて頂きました。児童相談所や保健所での調査によると2人のお子さんからはアザや暴力を振るわれた後、ストレスの外傷など発見できませんでした。」
検察官は調べたことを淡々と述べた
「嘘だろう?俺はこの目で見たんだよ。娘が浴槽に頭を押し付けられている所や食事を与えられていない様子をね!」
夫は信じられないと訴えてきたのだ。
「ですが、どちらのお子さんの体重や身長を調べても同じ年齢の子と変わりはありませんでした。なので正常と言っていいでしょう。従って子供の親権は母親となります。」
検察官は次のように述べた。
「この事柄に意義がある方は申し出るように!」
裁判官のゴングが鳴ると傍聴席の人々が頷いたので彼は反発するチャンスを失ってしまった。こうして離婚裁判は幕を閉じた。
では彼の見た光景は幻覚だったのだろうか?いや、そうではない。これも妻が夫に勝つための秘策であった。
裁判をあと1ヶ月と控えたとき妻である母親はエミリーに急に十分な食事を与え始め、エミリーを褒め称えこの期間は暴力を振るわなかった。娘に安心してもらい母である私を信じてもらおうという作戦だったのである。