第1章 プロローグ
裁判所にはエミリーと兄と親戚の方も傍聴席にいた。そしてそれぞれのおじいちゃん、おばあちゃんも来ていた。
「おばあちゃんに会うの久しぶりだね。」
エミリーは父方のおばあちゃんに微笑んだがすぐに顔色を変えて傍聴席から両親のやり取りを聞いていた。
エミリー達のいる街ヒルトンでの離婚の手続きは複雑である。
「離婚申請するには、夫婦どちらかが州内に6カ月以上住んでおり、申請するカウンティーに3カ月以上住んでいることが条件である。以上のことを満たしているか?」
裁判官が両親に問う。
「はい。」
2人は頷いた。
そして具体的な手続きだが多くのプロセスがある。まず夫婦どちらかが申請書(Petition-Marriage)、召喚状(Summons)などの必要な書類を裁判所に提出して、離婚申し立てをする。裁判所は受理後に、第3者(Process Server)か相手に受理された書類を手渡す。第3者とは、申し立てた本人、およびその親戚以外の18歳以上の人を指し、通常、弁護士事務所や郡保安官局が代行してくれる。
召喚状を受け取った人は、30日以内に召喚状送達証明書(Proof of Service of Summons)を裁判所へ提出する。30日以内に返答をしないと、申立人の要求通りの判決が下る。
次に、両者が、それぞれ資産と負債の明細書(Schedule of Assets & Debts)および収入と支出の申告書(Income & Expense Declaration)と、その2種の書類の開示申告書を、相手に開示する。その後、財産分与、子供に会う権利、養育費などを協議していく。資産の分配もこの段階で話し合うことになる。
「子供の権利だけど半年に1回はどうかしら?」
妻はは笑みを浮かべて夫に聞いた。
「おい、母さんに預けるなんて決まってないぞ!裁判官さんも聞いてくださいよ。ウチの妻の子供に対する扱いが酷いんです。」
夫は妻がしてきたことを全て話していった。しかし妻は不満げに”躾のためなんだから仕方ないでしょ!!”と憤慨した。