第9章 交差する闇、絶壁の霹靂

それからしばらくエミリーは考えていた。これまでのことを思い出していた。私はクローンなんかじゃない。私は・・・。

幼かった8歳の時に私は決断したの。マフィアに入ったのよ。そして数々の素晴らしいことを学んだわ。味方になってくれるのは仲間達だけもう家族なんて信じない。私はそう誓った。

もうすぐ17歳の誕生日を迎えるエミリーは車から窓の外を見つめて思いに老けていた。
車はそれでも進み続ける。サンライスで降りてエミリーは路地裏を通って大通りを抜ける前で止まった。エミリーはまた人々の鞄に目を凝らしていた。

「いいぞ、エリーナ！」
ベンジャミンが小声で後ろからエールを送った。
「あれじゃないわ、これでもない、あれでも、これでも・・・。」
「Què estàs haciendo ahí？」
突然目の前に知らない男がエミリーに声をかけてきた。

これはスペイン語だわ。どうしよう・・・スペイン語がわからない？あっ、そうだわ。メイソンならとエミリーは思って後ろを振り返ってメイソンを呼んだ。
「ねぇ、メイソン！あの人の言っては意味わかる？」
「あー君は何してるのかね？だってさ。」
メイソンが面倒臭そうに言った。
「何してるって・・・。探し物をしてるだけよ。ってなんて言うの？」
エミリーはメイソンに聞いて教えてもらった言葉を言った。
「Estoy ・・・buscando algo・・・pero no te preocupes・・・ lo encontraré pronto!」
初めて話すスペイン語にドギマギしながらそう言ったエミリーはその場から離れようとした。しかし男に腕を掴まれてしまった。

「痛い、離して！」
「エミリーこっちだ。」
メイソンがうっかりエミリーの名前を口にしてしまった。男はニヤリと笑みを浮かべてエミリーの口を手で押さえた。

「Esta mujer parece ser un buen material tal como lo entiende!」
「嘘だろ・・・おい！Espere por favor!」
「★※？！？※○X」
メイソンが叫んだと同時にエミリーが何か口籠る音が交差して遠ざかっていった。