第9章 3月 【柔らかな風の吹く日に】黒バス/青峰/and more
ノトは学校が終わった後、制服のまま慌てて電車に乗り込んだ。
桐皇学園の最寄り駅に辿り着くまでに何度も自分の受験番号を確認する。
本当は明日送られてくる合否通知を待つつもりだったけど、さつきさんが一緒に行ってくれるというので心強く、足を運ぶ決心をした。
ICカードで目的の改札を抜けると、そこで待っていたのは桃色の髪の大好きな先輩ではなく、恋い焦がれたひとつ年上の青い目をした先輩で、胸が高鳴り足が一歩も動かなくなる。
「青峰さん…?」
「頼まれたんだよ、さつきに」
嘘みたいな現実に未だ動けないでいると、青峰さんの大きな手が私の手を包んだ。
歩みを進める青峰さんの後を、遅れないように付いていく。
この手の温もりが連れてってくれる方へ、どこまでも付いてきたいよ。
桐皇学園の正門から足を踏み入れる。
今日は柔らかな風が吹いて穏やかな天気だった。
茜色に染まる空の下、前方、昇降口の前に張り出された掲示板を西日が照らしている。
結果を見る前に、もう一度だけ自分の受験番号を確認した。
緊張していたのをもたもたしていると思ったのか、青峰さんが私のスマホを奪う。
受験番号を確認するつもりだ。
もしも受かってなかったら?それを青峰さんに先に知られたら?
そんなの絶対に嫌だ。
青峰さんよりも早く番号を見つけようと掲示板の目の前に駆け込んだ。
...359...360...363...
「あった!ありました、365番!!」
嬉しくて身体中に熱が溢れて、涙がこぼれそうになって、ぜったいに顔を見られないよう慌てて両手で鼻と口を塞いだ。
「また一緒にバスケができるのが、すっごく嬉しいです」
バスケの神様は、努力した人にさらなるチャンスを与えてくれるみたいだ。
影ながらでいいから、また、青峰さんを側で支えさせてください。