第9章 3月 【柔らかな風の吹く日に】黒バス/青峰/and more
青峰は閉じていた瞼を開ける。
窓から僅かに見える澄んだ青が目に刺さるように飛び込んでくる。
意識ははっきりとしているのに、上下スウェットのままベッドの上から動けない、いや動く気が起きない。
今日は桐皇の入試の合格発表の日。
平日だが学校が休みになった。
部活も禁止だ。
外はまだ寒いが、柔らかな風が吹いている。
春はもう、すぐそこまで来ていた。
再び目を瞑り眠りに就こうとすると、玄関で鳴り響いたチャイムが遠くに聞こえた。
階段を駆け上がる音は相変わらず爽快なテンポで、来客者は誰なのかすぐに分かる。
「大ちゃん、聞いて!」
さつきは今日もハイテンションで幼馴染に駆け寄り、大きな体を揺さぶった。
「んだよ、寝かせろよ」
どうせ買い物に行こうと誘われるのだろう。
今日はそんな気分ではない。
青峰はいつものそれをうざったく思いながら彼女に背を向けた。
「ウチの学校の入試の結果、今日の5時まで掲示されるんだって」
さつきの声の方に、耳だけが傾く。
「ノトちゃんの学校が終わった後、一緒に見に行かない?」
ノトの名が鼓膜に触れた瞬間、身体中を熱い血が巡った気がした。