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サンロクゴ

第8章 1月【二人きりの夜ばなし】黒子のバスケ/青峰大輝




家の近くまで来ると私は青峰さんの手をそっと離した。
もしも誰かに見られたら、面倒なことになるから。


青峰さんに向かって深々とおじぎをした私は、コートの右ポケットに手を入れてさつきさんの手作りお守りをぎゅっと握りしめた。


「今日は、ありがとうございました。絶対合格して、また、青峰さんたちとバスケします!」
「……はっ」


私は真剣に合格宣言をしたというのに、青峰さんは声を殺して笑っている。


…なんの笑いだろうか。


「青峰さん、受からないと思って、馬鹿にしてます?」
「ちげーよ。お前、昔っからマネなのに『バスケしてる』って言うよな。やっぱ変わんねぇな」
「それは…!」



それは、プレイヤーじゃなくても、マネだってみんなと気持ちは一緒だって思ってるから。



「分かってるよ、言いてぇことは。入部待ってるぜ」



ご機嫌な青峰さんは、馬鹿にされたと不機嫌にうつむく私の頭の上に大きな手を乗せくしゃりと撫でた。

…どきっとして、恥ずかしくて青峰さんが見れない。
うつむいたまま、不機嫌な振りをしてやり過ごそう。

そのうちに私の頬を長くて無骨な指が伝って、指先が首に巻いたままのスヌードぐっと下げ丁寧に私の唇をなぞる。
最後に顎を持ち上げられた。
え、これって…キス!?
動揺しながら好きな人の目を覗いたら、生気を纏ったその目に捕らえられ、決して目を逸らせない。


…やっぱり、カッコいいです。大好きです。
青峰さんとキスなんて、夢の中でもしたことないよ。


今自分の身に起こっている幸せに、涙腺が潤んで、恥ずかしいけれど、目を閉じた。




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