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サンロクゴ

第8章 1月【二人きりの夜ばなし】黒子のバスケ/青峰大輝




「あ、あの!渡したい物って何ですか?」


青峰さんは、ポケットからある物を取り出した。
それは…


「…これ、なんですか?」
「知らねえ。お守りらしいぜ、手作りの」


形は四角のような、色はピンクがベースの、フェルト生地の小さな物体を渡される。


「さつきから」


送り主の名前を聞いて、納得してしまう。
大好きで可愛くてバスケをよく知るさつきさんは、とっても不器用だ。


「あとこれ」


もうひとつ、裏に『がんばれ♡』と油性マジックで書かれたチョコ菓子の小袋をもらう。
1年前はよく目にしていた、懐かしい、さつきさんの文字。
大抵は語尾にハートマークが付くところも前から変わらない。
さつきさんの気持ちが嬉しくて、2つをコートのポケットに大事にしまった。



「…用はそんだけだ」



青峰さんは立ち上がり、家まで送ると言ってくれた。



さつきさんからのエール、すごく嬉しかった。
青峰さんに会えたことも、すごく嬉しかった。
だからこそ、もうサヨナラするのが寂しかった。



「青峰さん!」



誰もいない冬の公園、寒空の下。
その背中を眺めていたら、また大きな声が出てしまった。そんなつもりはなかったのに。
何事かと振り向いた青峰さん。




「そのためだけに、来てくれたんですか?」



別の用事のついでだって構わなかった。
その答えはなんだってよかった。
ただ、もう少し『夜咄』を続けたかっただけ。



「…そーだよ。行くぞ、風邪ひく前に帰れ」



立ち止まる私の右手を青峰さんが粗く掴んだ。
左手はミルクティーの熱に、右手は青峰さんの熱に温められたら、鼓動が走り出す。
もっと話をしていたかったはずなのに、言葉が喉を通らない。


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