第7章 7月【星降る夜、君とふたりぼっち】スラムダンク/三井寿
披露宴会場は真っ暗になり、画面に映し出されるのは「ハッピーウェディング」の文字。
流れるBGMは、高校生のとき友人の黒木に教えてもらいすごく気に入って、今でもたまに聞いているバンドのバラード。
プロの黒木に映像作成を頼んだ際、使用する写真を渡したのみで曲も構成も全て任せたから、私の好みを良く分かっている彼女らしい、とノトは嬉しく思った。
最初に画面に表れたのは、ノトが中学・高校の友達と一緒に映る写真。
文化祭のとき、みんなで撮った変顔ショットが映し出されノトの顔が赤くなる。
その後、写真に映っていた友人たちが動画で現れた。
これ、生い立ちムービーじゃない。
場所は湘北高校。
懐かしい教室の風景が映っている。
中央に映る子は、手にバスケットボールを握っていた。
『正直、最初はどこのオジョーかと思って絶対仲良くなれないって思ってました。でも気さくで、美人で、はっきりしているノトが大好きです。結婚しても変わらず遊んでね!』
手の中のボールは、画面の右側にパスされる。
続いて映し出された写真は、高校3年生、男子バスケ部が山王戦に勝利したときの集合写真。
14番のユニフォームの三井は、今に比べて幼く見える。
場所は湘北高校体育館。
小暮がキャッチするはずの、左側から流れたボールを桜木がキャッチして、段取りが違うだろう!と画面の中で赤木に怒られている。
披露宴会場には笑いが起こり、桜木は顔を赤らめている。
『えー、ノトさん、三井、この度はご結婚真におめでとうございます…』
「さっき聞いたスピーチと同じ事言ってんじゃねぇか!」
三井が照れながらも小暮を睨めば、またも会場に笑いが起こる。
仲が良いんだか悪いんだか、でもノトは、三井が共にバスケをしていたこのメンバーが好きだ。
見ていれば顔が綻んでいく。
画面が急に切り替わり、映し出されたのは指でバスケットボールを回しながら映り込む1人の男性。
『…おめでとうございます』
遠いアメリカの地で活躍する、流川だった。
そのたった一言で動画が消えると、調子乗んなよと三井は呟いた。
けれどその横顔は、嬉しそうだった。