第7章 7月【星降る夜、君とふたりぼっち】スラムダンク/三井寿
「それでは、新郎新婦のご入場です」
2人が気に入って選んだ音楽から披露宴は始まった。
友人や同僚の心からの温かい拍手に包まれて、主役は高砂へと進んでいく。
ノトの父が招待した「大切なゲスト」たちはジロジロとこちらを眺め2人の全てを値踏みするようだったが、ノトはそんなことはどうでも良いのだとばかりにとびきりの愛想笑いで側をやり過ごした。
案の定、三井の友人代表である小暮がスピーチをする間にも父親はゲストたちへのおもてなしに夢中だった。
こうなるから、嫌だったんだ。
「ごめんね」とノトが小暮にジェスチャーをすると、彼はにこやかに手を振っている。
「今日はせっかく目立ってんだから、ふてくされんなよ」
「…分かってます」
「はっはっは、こんな日までケンカとは、また何かやらかしたなミッチー」
「指輪スゲー似合ってますね、ノトさん」
スピーチ、ケーキバイトが終わり歓談の時間となれば、すぐさま飛んできたのはバスケ部の後輩たちだ。
ケガを乗り越えプロのバスケ選手として活躍する桜木と、指輪を買ったジュエリーショップで働く宮城。
遅れて小暮と赤木がやってきた。
ノトは小暮にごめんね、ありがとうとひたすら謝ったが、小暮は気にしなくていいんだと穏やかに笑っていた。
こうなるだろうと思い余興も頼まず、演出を減らし歓談の時間を多く設けたためか、三井の友人たち、ノトの友人たちが続々と高砂に集まってくる。
その度に飲まされた三井の酔いも良い具合に回った頃。
アテンドに促され、2人は会場中央に用意されたイスに座る。
生い立ちのムービーだろうか。ああ、もうこんな時間か。高砂からでも十分に見えるのに。
「それでは皆様、中央の画面をご覧ください」
このときばかりは、お酒を注いで回っていた父親も自席に座り、事を見守っていた。