第7章 7月【星降る夜、君とふたりぼっち】スラムダンク/三井寿
「三井、なんで披露宴するの?嫁が嫌だって言ってるのに。今どき親族で挙式だけってのもフツーだよ?」
テーブルの上には生が2つとハイボールが2つ。
ハイボールの氷をカランと鳴らしながら、黒木はいつものようにはっきりとシンプルに物申す。
「結婚は俺たちだけの問題じゃねぇ。親父さんがするっつったら、するんだよ」
「ノトが嫌だって言っても?」
「駄目だ」
ここにも、私の父親に似た頑固オヤジがまた1人。
「俺はみっちゃんの気持ちも分かるぜ。惚れた女を貰うっつーのは、男も覚悟背負ってんだ」
「お前はいつも大げさなんだよ」
「そういうのはよく分かんないけど、三井が家族思いなことはよーく分かった。あのヘタレの三井がねぇ…」
「うるせぇ、ちっと黙れ黒木」
「はい出たフリョー」
「……殺す」
「まぁまぁ、今日は楽しく飲もうや。すんませーん、生1つ」
黒木に対して怒りを露わにしている三井。
そうだ、三井は元々プライドが高くて負けず嫌い。
その彼がノトの父親に土下座までし結婚を頼み込み、更には自身が良い思いをすることはないだろう披露宴を開こうとしている。
全てはノトと幸せになるためだった。
「でも本当信じられない。良い男になったねー三井寿は」
「元々だっつーの」
「こんな男なかなかいないぜ、ノトちゃん」
そんなこと、私が一番よく知っている。